【第20回】相手と共感を得る「バックトラッキング法」
商談や接客時など、ビジネスシーンに応用できる心理学の知識を解説します。
バックトラッキングとは?
バックトラッキングとは、いわゆるオウム返しのことで相手が言ったことをそのまま言い返すことです。
例えば「最近、疲れていましてね」という人に対しては、「最近、疲れているのですね」とそのまま言い返します。これにより相手に《自分の話をよく聞いてくれている》ということが伝わります。
●解説
あなたが人と話をしていて、「いや、違うだろう」「そうじゃなくて」という相づちをされたらどう思いますか?話していて気分が悪くなるでしょう。人は誰でも自分の話をよく聞いてほしいし、理解してほしいと思っています。
私の知り合いで夫婦関係に悩んでいる人がいます。ケンカばかりで、仕事でも家でもストレスがたまっていました。例えばこのような感じです。
奥さん「最近やることが多くて片付けができないわ」
知人「掃除くらいできるだろ」
奥さん「子育てから家事まですべてやっているじゃない!」
知人「当たり前だ!お前の仕事だろ!」
最悪の状態です。
そこで、相手を否定するのではなく、相手の言ったことをそのまま受け入れるようにしたそうです。
奥さん「最近やることが多くて片付けができないわ」
知人「最近やることが多くて片付けができないのかい?」
奥さん「ええ、小学校の行事や役員の仕事も多くて…」
知人「そうか、役員の仕事も多いんだね」
知人は奥さんの言ったことをオウム返ししただけで、夫婦関係が改善され営業活動にも支障がなくなったといいます。
これはお客さまと話をしているときでも同じことが言えます。
お客さまに否定的なことを言われるとどうしても反発したくなります。
お客さま「おたくの商品は使いづらくてねぇ」
営業マン「それは使い方がよくないのだと思いますよ。まずはこのように…」
これではお客さまはいい感じを受けません。たとえそれが正しい説明だとしてもいい関係にはなれないのです。
どんなに言い訳をしたくても一度お客さまの言っていることを受け入れます。
お客さま「この前、電源が入らなくなってね」
営業マン「電源が入らなくなったのですね。それは…」
このように相手の言ったことをオウム返しして一度受け止めます。
お客さまとの関係も夫婦関係同様、一度受け入れることで劇的に反応が改善されることがあります。
菊原智明●営業コンサルタント。大学卒業後、大手住宅メーカーに入社し、営業部に配属。「口ベタ」「あがり症」に悩み、7年間、苦しい営業マン時代を過ごす。その後、それまでの営業活動の間違いに気づいてやり方を大きく変えたところ、成績がみるみる上がり4年連続トップ営業マンに。自分と同じように営業に悩んでいる人たちをサポートしたいとの思いから、2006年に独立。著者に『訪問しないで「売れる営業」に変わる本』(大和出版)、『トップ営業マンのルール』(明日香出版社)、『面接ではウソをつけ』(星海社新書)など多数。
http://www.tuki1.net/
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