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メンタルコントロールは仕事の成果や自己成長につながる重要なスキルです。ビジネスシーンでわき起こるさまざまな感情との向き合い方を解説します。(2021年9月21日)
Aさん(35歳男性)は、上司のBさん(37歳男性)に目をつけられてしまい、大変消耗しています。不眠がちで胃腸の調子を崩し、体重も5キロ減りました。
Bさんは体育会系で、仕事に厳しいことで社内でも有名です。また、ITに強く、コロナ禍でもさまざまな手立てを駆使して、営業成績を伸ばしています。Aさんは店舗から営業に移って1年たったところ。1年目は新人として扱ってもらっていましたが、2年目以降は担当を任され、責任とプレッシャーが強くなってきました。
そんなとき、自分のミスで取引先を怒らせてしまい、Bさんからひどく叱責を受けました。それ以来、Bさんが怖くなり、どうしても避けようとしてしまいます。ところが避けようとすればするほど、Bさんに見つかり、なぜか今はもう自分だけが目をつけられている状態になってしまいました。
「秘密は守ってくれますか」とおびえた感じで相談を始めたAさん。話を聞けば聞くほど、上司のBさんのことがトラウマのように苦手になっているようです。恐らく客観的に見ると、Bさんの行為は他の人にとっては「厳しい上司」というレベルかもしれませんが、弱っているAさんにとっては2倍の苦痛になっていると思われます(7月号で紹介した2倍敏感になるモード)。会社に行くことが難しくなり、一方で休んだら「また指導されるのではないか」とおびえるという悪循環が生じていました。
私が「Bさんのことは、人事やほかの上司に相談したの?」と聞くと、「誰にも相談していません。Bさんの言っていることは確かに正しいのです。僕に悪いところがあるのです」と答えます。続けて「仲間や奥さんに愚痴とか言わないの?」と問うと、「愚痴るのは嫌です。弱音は吐きたくない。愚痴は我慢して、なんとか自分で対処しようとしてます」とおっしゃいました。
Aさんは上司に対する怒りというよりも、むしろ自分のふがいなさに対して落胆し、自分を責めているようでした。
「どうしたらもっと強くなれるでしょうか?」というAさんに対し、私は「厳しい上司に対する基本的な対策をお伝えします。人間の心の回復と強化にとって重要なステップなのでよく聞いてください。今回のように、ある人から攻撃されると、私たちには原始人的な防衛反応が生じます。現代人としてではなく、原始人としてのケアをしないと防衛反応は終息しません。
原始人的ケアの1つ目は、敵から離れることです。攻撃してくる相手からできるだけ離れた時間を取って、少しダメージを回復する時間を持たなければなりません。これについてAさんは少し休みを取ろうとしているので、ある程度できていると思ってください」
以下、Aさんとのやりとりです。
Aさん「なるほど、でもそれは逃げではないのですか?」
私「あなたは、上司と真剣に戦おうとしています。それは長期戦ですよね。きっちりと戦い続けるためには、必ず休養が必要です。ボクシングでも3分戦ったら1分の休みがある。あのステップを取っていると思ってください」
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●文/下園壮太(しもぞの そうた)
元陸上自衛隊メンタル教官、メンタル・レスキュー協会理事長、同シニアインストラクター。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。陸自初の心理幹部として、自衛隊員のメンタルヘルス教育、リーダーシップ育成、カウンセリングなどを行う。退官後は講演や研修を通して、独自のカウンセリング技術の普及に努める。『自衛隊メンタル教官が教える心をリセットする技術』(青春出版社)、『50代から心を整える技術』(朝日新書)など著書多数。
https://www.yayoinokokoro.net/
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