第20回「恐ろしいブラック上司の実態」
部下の成長は、上司にかかっています。今回は、上司について考察をします。
スーツ姿のサラリーマンたちが居酒屋などで、上司の愚痴を言い合っている姿はよく目にする。理想的な上司にはなかなか巡り合えないものなのだろうか。上司が部下だったときの経験を活かせば、誰でも理想の上司になれるはずなのだが…。
上司は選べない
私は、たまたま以下のような会話をしている席に同席した。成果の出せないダメな社員をどうしたらいいか、という相談だった。
営業部の新任上司は28歳。入社8カ月の部下を前に、「やる気がないんだよなァ」「緊張感がまったくないよ」「いつまでも新入社員じゃないんだから」「必死でやらなきゃ、なんの結果も出せないだろ」「どうして結果が出せないんだ、言ってみろよ」などと言って説教している。決して教育や指導というものではなく、ただ相手に否定的、攻撃的な言い方をして自分のストレスを発散し、ただ萎縮させているだけなのだ。
そして、これから反省文を書かせるという。私は、「この上司は部下の可能性を奪うブラック上司だ」と思った。この部下はひたすら下を向き、細い声で「はい、はい」と言うだけ。もはや、彼は軽いうつ状態だった。
人をダメにする仕組み
異動についてのアンケート調査がある。「業務異動を希望する際に最も重視すること」(アイリサーチ調査、R25・10/17号掲載)という調査によると、およそ半数が業務内容で異動を希望するのだ。掲載誌に載っていた中村未来氏の記事「異動希望がかなうのは1割? サラリーマンの人事異動白書」によると、異動希望を出しても希望どおりになるのは1割ほど、ということだ。ほとんどの人が希望する仕事ができないということのようだ。
希望する仕事に就けず、もし上司が否定的なことばかり言うブラック上司だったら、どんな人間でもうつ状態になるだろう。人間を精神的にダメにする仕組みは単純だ。適正配置がされず、職場で十分に能力を発揮できるように指導、教育がされない。すると仕事がうまくいかなくなる。
そして上司に叱責され、残業が増え、過労が重なる。その結果、職場の人間関係が悪くなり、さまざまなストレスを抱え込み、うつ状態が悪化するという悪循環になる。
ブラック上司
ブラック上司は、部下の可能性を伸ばせないだけでなく、コミュニケーションにも問題がある。否定的、攻撃的なメッセージで意欲を奪い、相手が答えられないような問いかけをして、精神的に追い詰めるのが得意だ。そうした上司は成果が出ないのを部下の責任にすり替えたりするだろう。
こうしたブラック上司はたくさん存在している。会社の管理者教育がしっかりしていないからだ。そして、会社は社員の可能性を大切にするという方針を示していないことにも問題がありそうだ。
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●河田俊男
1954年生まれ。心理コンサルタント。1982年、アメリカにて心理療法を学ぶ。その後、日本で心理コンサルティングを学び、現在、日本心理相談研究所所長。また、日本心理コンサルタント学院講師として後進を育成している。翻訳書に「トクシック・ピープルはた迷惑な隣人たち」(講談社)などがある。
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