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これからの人材活用

働く側からみた理想の会社

朝日新聞土曜版「be」で、コラム『はたらく気持ち』を連載する田中和彦さんは、人材サービス関連の情報誌編集長を経て、現在は人材コンサルタント業を中心に活動しています。「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに年間100以上の講演も行っている田中さんに、働く側からみた理想の会社について述べていただきます。

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なぜボロい社屋の町工場に人が集まったのか?

 私が就職情報誌の編集長をしていたころの話です。ちょうどバブル景気の終わりのタイミングで、ビリヤード台のあるプールバー付き豪華社員寮がメディアに登場し、都心にあるオシャレなオフィス、充実した福利厚生制度、高給与にブランド力のある社名など、人が集まる企業の条件が話題になっていました。

 そんな中、下町の町工場が人手不足に窮し、背に腹は代えられないと、高い広告費を出して、求人広告を発注してくれました。町工場の社長の気持ちに応えなければと、私たちも真剣に広告作りに力を注いだのです。

 求人広告が掲載された当日、心配する営業マンが状況を尋ねると、社長は、「問い合わせの電話が入ってきてるよ。それも真面目に就職先として考えてくれてるんだ」と、喜んでいるではありませんか。その後、応募者全員と面接を行い、2人の採用予定だったのに、「結果的にどうしても絞り切れずに3人採用してしまった」と、苦笑いしていました。

 コピーライターが考え抜いた広告のキャッチコピーは、次のようなものでした。

「社屋はボロい。最寄りの駅から歩いて15分はかかる。給料は決して高いとは言えない。仕事もそれなりにきつい。でも、社内はいつも笑顔であふれている。そして、未経験でも立派な一人前に鍛えたいという熱い想いのオヤジ社長があなたを待っている」

 写真には、本当にうそ偽りなくボロい社屋の前で、満面の笑みの従業員といかにも人情家のオヤジさん風の社長が写っていました。お世辞にも洗練されたビジュアルとは言えません。
しかし、数は多くなかったものの、この広告に魅せられた志望動機の明確な人が応募してくれたのです。待遇的な条件よりも、温かい人間関係の中で自分を真剣に育ててほしいという、熱い想いを持った応募者たちだったと聞きました。



広告ではなく、「狭告」が働き手の気持ちに刺さる

 実はこの広告の手法は、過去に代表的なものがありました。誰にでも来てほしいわけではなく、本当に来てほしい人に届くための「相手を選ぶ」広告です。
 19世紀にアイルランドで生まれた冒険家アーネスト・ヘンリー・シャクルトン(※)が、南極探検の同志を集めるために出した有名な募集広告が、まさに「相手を選ぶ」ものでした。

※シャクルトンは、危機的状況下のリーダーシップモデルとして知られている。1914年、シャクルトン率いる南極横断隊は南極大陸に向かった。だが、航海の途上で遭難し、氷海で孤立無援となる。そんな中、シャクルトンは類いまれなリーダーシップを発揮し、隊員全員を奇跡の生還へ導く。


<募集広告・原文>
MEN WANTED for Hazardous Journey.
Small wages, bitter cold, long months of complete darkness, constant danger, safe return doubtful.
Honor and recognition in case of success.
Ernest Shackleton


<和訳>
求む男子。至難の旅。
僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証無し。
成功の暁には名誉と賞賛を得る。
アーネスト・シャクルトン



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田中和彦●株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)など多数。
連絡先:
info@planet-5.com
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