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倉石優香さん(仮名・23歳)は今年3月、勤務先のレディースファッションチェーンの全店舗で、売上1位をたたき出した。入社4年目にして異例のスピードだった。
「うちの店はデパートのテナントを中心に東日本に20店舗ぐらいあって、客層は主に20代のお嬢様系ファッションの女性です。私のいる店は全店舗のなかでも立地条件にめぐまれているので、売上はほかの店に比べて多くなります。それでも、自分なりに努力をして出した結果です。今夏のボーナス査定の面談の席で、上司に言われた言葉は忘れられません」
短大を卒業後、倉石さんは新卒で憧れだった今の会社に入った。賞与や昇給は微々たるものだと事前に聞いていたが、第1志望の会社だっただけに待遇面については深く考えなかった。だが、今回の件で大事なことなのだと思い知った。
「査定の面談で、2歳年上の女性店長にこう言われたんです。“うちの服はブランド力があるし、この店舗は稼ぎ頭だから1位になっても勘違いしないほうがいいよ”って。その一言でモチベーションが一気に下がりました」
倉石さんは固定客を多くつかんでいた。とくに女子大生には人気で、彼女たちは倉石さんの接客スキルで財布のひもを緩めた。
「私はお客さんが最初に“これ、似合いますか?”と聞いてきたものには、たいてい首を振ります。別の商品をすかさず持っていって、“お客さんには、こっちのほうが似合います”と理由を添えてハッキリ言うんです。ほかには、ジャケットを買いに来た人がいれば、スカートやブラウスもつける。予算が3万円だというお客さんには、4万円相当を売るように努力します。3万円の予算があるということは、少しぐらいのプラスアルファは出していただける可能性があります。そうやってさまざまな工夫をして、売上につながるように仕事をしているので、それに見合った評価が欲しいと思うようになりました。でも、今回のボーナスは前回と変わりませんでした」
倉石さんの士気をそいだのはそれだけではなかった。しばしばうわさされる特別な人事のことだ。倉石さんがそのことを知ったのは、今の店長が赴任してきた2年目の春だった。
「同僚の先輩たちがうわさをし始めたんです。“新しい店長、本社の誰と寝たんだろう”って」
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