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働く個人にこれまでのキャリアや仕事観を聞き、企業が人を雇用する上で考えなければならないことを探ります。
海外の流通会社でエリア・マネジャーとなって5年、西村奈々さん(仮名・33歳)は帰国を考え始めているという。
「理由は、両親の高齢化と将来に対する不安です」
会社は花の輸出を手がけており、西村さんの仕事は日本企業との窓口業務である。雇用契約は2年ごとだ。年に1度は帰国のための長期休暇があり、渡航費用は会社が負担してくれる。
「海外の企業で、日本担当のエリア・マネジャーといえば聞こえはいいかもしれませんが、地味で孤独な職場です。当地の人たちはお国柄なのか、アポイントとか契約の履行という概念が薄い人が少なくありません。日本企業の要望を、そんな人たちに伝えて調整するのが私の役目です。スタッフは10人ほどで皆さん、明るく接してくれますが、家族第一主義の国なので、仕事帰りに食事に行くなどの習慣はありません。日本の企業だと、同僚との飲み会や各種イベントがあるじゃないですか。新卒で日本の会社に就職した当時はうざいと思っていましたが、今となっては懐かしいです」
西村さんは私大の国際関係学部を卒業後、メーカーの新卒社員となった。だが第1志望は航空会社だった。
「中学生のころから夢でした。卒業文集にもそう書きましたし、語学も好きで留学もしました。でも、この世界はとても狭き門。新卒で1社も受からず、結局、他業種で内定した一般職のメーカーにずるずる入社したというのが実情です。在職しながら第2新卒でも受けましたが、ダメでした」
仕事は総合職の営業マンのサポートや事務作業が大半。安定した会社だったが、語学が好きで、ずっと勉強を続けてきたという思いがくすぶっていた。同級生には意識の高い人が多く、商社や外資で活躍していた。中学、高校の成績はいつもトップクラスだった西村さん。青春時代を勉強に捧げてきたのに、これがゴールかと思うとむなしくなった。
「そんなころ、所属部署の部長が言った言葉が退職の引き金になりました。“君たちは総合職男子のお嫁さん候補なんだから、いい男を早く捕まえないと会社のお局さまになっちゃうよ”って。飲み会の席だったとはいえ、一般職の女子をそういう目で見ているのが我慢できませんでした。3年間で見切りをつけて、思い切って海外ボランティアに行くことにしたのです」
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