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人の心が引き起こすさまざまなトラブルを取り上げ、その背景や解決方法、予防策などを探ります。
家に帰ったとき、いるはずの家族がいなかったらどう思うだろう。事件に巻き込まれたのではないか、と不安になるかもしれない。そんなときに何を考え、どんな行動をするか、想像すらできない。しかし、現実に起こることがある。
真っ暗な家
35歳の裕之は建築会社に勤務していた。入社10年のベテランで、地方や海外など出張が多かった。ある日、海外出張から帰国して家に帰ると部屋は真っ暗で、妻と子供がいなかった。
妻に電話をしたが出なかったので、メールをして返信を待った。時折、妻の朋子は近所の友人のところに泊りがけで遊びに行くことがあった。恐らく、友人宅にいるだろうと思った。しばらくすると、朋子からメールがあった。内容は「あなたと一緒に生活することはできませんので別居します。子供は元気です。また連絡します」というものだった。
家出を計画
朋子はパート採用されたスーパーで仕事ぶりを高く評価され、正社員になった。家のローンや子供の教育費もあるので、よりよい収入を得るために一生懸命に働いた。仕事は忙しく、子供がちょうど小学校1年生になる節目もあり、生活との両立に疲れ果てていた。
夫の裕之は出張から帰るといつも、朋子に向かって「お前の実家に金があれば、こんなにローンに苦労しなかった。貧乏人の娘はろくなことがない」「お前は料理が下手だ。何年やっても成長しないのは、どういうわけだ」などと言葉の暴力を浴びせていた。結婚して10年になるが、朋子は幸せを感じた瞬間はなかった。
朋子は、裕之の言葉で「自分は価値のない人間だ」「生きる意味さえない」というメッセージを受け取り、深く傷ついていた。やがて苦痛の限界を超え、別居の準備を始めた。仕事に困らないように、福祉関係の資格をとった。裕之に秘密でマンションを借り、少しずつ寝具や家具、家電などを買いそろえていた。そして、裕之が出張している間に家出を決行したのだ。
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●文/河田俊男(かわだ としお)
1954年生まれ。心理コンサルタント。1982年、アメリカにて心理療法を学ぶ。その後、日本で心理コンサルティングを学び、現在、日本心理相談研究所所長、人と可能性研究所所長。また、日本心理コンサルタント学院講師として後進を育成している。翻訳書に「トクシック・ピープルはた迷惑な隣人たち」(講談社)などがある。
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