「七五三現象」から「五四四現象」へ
大学を卒業して3年以内に離職する人が16年ぶりに高水準になっています。先月25日に公表された厚生労働省(新規学卒就職者の離職状況/令和3年3月卒業者)の調査によると、2021年に大学を卒業して就職した人のうち、3年以内に仕事を辞めた人の割合が前の年から2.6ポイント高い34.9%でした。ちなみに、中卒は50.5%、高卒は38.4%。かつて、「七五三現象」と称された「中卒7割、高卒5割、大卒3割」という新卒で就職して3年以内の離職率も、年々変化しています。もはや「七五三」ではなく「五四四」になりつつあります。
特に大卒の離職率が高まった要因として、就職活動の際に新型コロナウイルスの影響を受けた世代で、求人が減り、希望の職種に就けなかったこと、そして、現在の若者特有の就労観が影響を与えていることは、誰もが理解できるところではないでしょうか。
■【厚生労働省】新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)2024年10月25日
会社を辞める理由、職業生活の満足度
さて、若手の就労観とは、いったいどのようなものなのでしょうか。ここでは、若年者雇用実態調査(厚生労働省 2024年9月25日)の結果をみていきましょう。例えば、初めて勤務した会社を辞めた主な理由として、下記が上位3つです。
1位「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」 28.5%
2位「人間関係がよくなかった」 26.4%、
3位「賃金の条件がよくなかった」21.8%
会社を辞める理由は、仕事の内容というよりも、労働条件、労働環境のようです。もちろん、労働条件、労働環境は、仕事をする上で大切な条件です。コロナ禍で就活も充分にできなかったこと、採用数も減っていたこともあり、自分の望む労働条件、労働環境の会社に就職できなかった方もいるでしょう。同じ仕事、職務ならば好条件の会社が良いに決まっています。しかし、労働条件、労働環境だけが、会社、仕事を選ぶ基準ではないはずです。
そもそも、若年者(正規、非正規)は、労働条件、労働環境を重視しているものの、一方で、会社生活、職業生活の満足度は、下記の通り、「仕事の内容・やりがい」が上位に挙げています。
<正規>
1位「雇用の安定性」66.4 ポイント
2位「職場の人間関係、コミュニケーション」 57.3 ポイント、
3位「仕事の内容・やりがい」55.2 ポイント
1位「仕事の内容・やりがい」 59.9 ポイント
2位「労働時間・休日等の労働条件」 54.8 ポイント
3位「職場の人間関係、コミュニケーション」 54.5 ポイント
■【厚生労働省】令和5年若年者雇用実態調査の概況/若年労働者の職業生活の満足度(令和6年9月25日)
「仕事の内容・やりがい」とは、すなわち仕事を進めていく中でしか得ることができないプロセス、成果、他者からの承認、自己実現、等々です。これらは、短期では得ることが難しいです。例えば、米国の組織行動学者デービッド・コルブ氏は、人は実際の経験を通し、それを省察することでより深く学べ、「経験→振り返り→概念化→実践」という4段階の学習サイクルから成る「経験学習モデル」が有効であると提唱しています。ただ、これを若手が一人で、短期間で進めるのは困難です。中長期的な視点をもち、上司、先輩の支援を仰ぎ創意工夫、試行錯誤しながら「仕事の内容・やりがい」の質を高めることが必要でしょう。
●文/波多野雅彦(はたの まさひこ)
株式会社アイデム 東日本事業本部 キャリア開発支援チーム/教育・研修企画担当/キャリアコンサルタント(国家資格)
大学卒業後、大手ゼネコンにて国内外建設プロジェクトの施工管理に従事。経営学修士号取得後、経営コンサルティング会社にて経営体質改善・人材育成支援業務に携わる。現在、キャリア開発支援チームにて、教育・研修を通してお客様が目指す会社づくり、人づくりにお役に立てることを目指して日々業務に取り組んでいる。