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事例で考える困ったときのマネジメント対応／山田真由子

第20回「パワハラが怖くて部下を注意できない」

働き方や価値観が多様化する中、マネジメントは個別対応が求められています。さまざまな事例から、マネジャーに求められる対応を解説します。（2025年11月6日）

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小さな問題を大きくしない

　次に、放置していた問題がエスカレートしてしまうことについてです。事例をもとに、問題が大きくなっていく過程を考えてみましょう。TWI（企業内監督者訓練）※の「人の扱い方」では、問題が起こるプロセスを4つの段階で説明しています。

※TWI（Training Within Industry）：企業内（Within Industry）で行う職場教育（Training）の手法の1つで、主に管理監督者向けの教育プログラム


＜問題の起こる4つの段階＞

【第1段階】予期する段階
現時点では大きな問題にはなっていないものの、過去の経験から「このまま放置すると問題化する可能性がある」と考える段階。Bさんに問題を感じているものの、注意や指導ができていない状況。





【第2段階】感知する段階
Bさんの態度や行動の変化を観察し、小さなサインから状況悪化の予兆を感じ取る段階。例えば、「以前はきちんと報告書を提出していたのに、最近は様子が変わってきた」といった兆候が挙げられる。

【第3段階】向かってくる段階
問題が組織全体に影響を及ぼし始め、仕事の質や規律が低下する段階。Bさんが注意されていないことで、部下たちも「上司が注意されないのだから、自分も期日を守らなくていい」と考えるようになって雰囲気が悪化し始めるころ。

【第4段階】飛び込む段階
深刻なトラブルや人間関係の亀裂、離職、顧客対応の不備など、経営リスクに直結する問題へと発展する段階。AさんがBさんに気兼ねをして指導をしない時間が長ければ長いほど対応は難しくなり、大きな問題に発展する可能性がある。


　問題は小さいうちに対応することが肝心です。上司が勇気を持って一歩を踏み出し、組織が仕組みで支えることが、健全で活力ある職場をつくる第一歩となります。


●文／山田真由子（やまだ まゆこ）
山田真由子社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士、公認心理師、キャリアコンサルタント。26歳のときに3度目の受験で社会保険労務士に合格。さまざまな業種にわたり、約15年のOL 生活を経て、2006年12月に独立開業。現在、「誰もが輝く職場づくりをサポートする」をミッションとして活動している。経営者や総務部担当者などから受けた相談件数は延べ10,000件以上、セミナー登壇は1,500回以上を数える。著書に『外国人労働者の雇い方完全マニュアル』（C&R研究所）、『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル部長、それってパワハラですよ』（徳間書店）、『すぐに使える！はじめて上司の対応ツール』（税務経理協会）。
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