「1on1ミーティング」という言葉、人材育成に携わっている方であれば、もはや基本用語と言ってもよいかもしれません。一時、書籍でヤフーが取り入れているということで話題になり、以前、本コラムでもテーマとして取り上げています。また、弊社ではオーダーメイド型研修として2020年、公開研修として2021年から定番化して、現在も継続して開催しています。丁度、新型コロナウイルス感染症の流行と並行して、お客様に浸透していきました。
それは、リモートワークの推進等々、以前よりも、職場のリーダーとメンバーが、積極的にコミュニケーションをとる機会が減っている背景もあるでしょう。いま「1on1ミーティング」は、人材育成の手法の一つとして、欠かすことができない手法の一つになってきています。皆さまの会社では、「1on1ミーティング」の導入はお済みでしょうか?
「1on1ミーティング」実践できない理由を探さない
「1on1ミーティング」とは、チームのリーダーとメンバーが1対1で定期的に行う対話です。目的はメンバーの成長を支援することです。頻度は週に1回から月1回のペースで、時間は短いと15分程度、長くても60分程度です。ただ、弊社の研修を受講した人事担当者様からは、「いざ職場で実践しようとすると、なかなか思うように進まない」という相談を受けます。よくある進まない理由は、次の3つです。
1)忙しくて時間がない
2)1on1ミーティングなんてやっても無駄
3)何を話したら良いのか分からない
1)は、やらない理由のナンバー1です。仕事をされている方、それもリーダーの立場で暇な人はいないでしょう。メンバーの数が多い方は大変かもしれませんが、週1回15分程度の時間がつくれないのは、いかがなものでしょうか。仕事の仕方、タイムマネジメントの方法に問題があるかもしれません。おそらく、お客様とのお打合せの時間はつくれるはずですから、メンバーとの時間もお客様と同様に確定し、固定してしまいましょう。
2)は、「1on1ミーティング」の本当の意味と効果を知らない可能性が高いです。無理もありません、リーダークラスの殆どの方が「1on1ミーティング」を自分自身が受けたことがないからです。また、人事評価面談と混同している場合もあります。人事評価面談は、メンバーの給与やその他昇降格などの処遇を決定するために、従業員の業務の成果・能力を査定する場です。どちらかと言うと上司が部下へ話すことが多いです。「1on1ミーティング」で、話す割合の目安は、およそリーダー2割、メンバー8割です。
3)は、上司が何か話さなくてはと勘違いしている場合です。前述のとおり、リーダーは聴き役です。話すのはメンバーです。リーダーは、メンバーが話しやすいような状態をつくることを優先させます。また、「正しいことは言わなくては」「気の利いた指導をしなくては」と思いがちですが、それも不要です。効果的な質問を投げかけて、メンバーが自問自答できるようにサポートすることに徹します。
●文/波多野雅彦(はたの まさひこ)
株式会社アイデム 東日本事業本部 キャリア開発支援チーム/教育・研修企画担当/キャリアコンサルタント(国家資格)
大学卒業後、大手ゼネコンにて国内外建設プロジェクトの施工管理に従事。経営学修士号取得後、経営コンサルティング会社にて経営体質改善・人材育成支援業務に携わる。現在、キャリア開発支援チームにて、教育・研修を通してお客様が目指す会社づくり、人づくりにお役に立てることを目指して日々業務に取り組んでいる。