共働き世帯において、子供の小学校入学を機に仕事と家事・育児との両立が難しくなることです。主に、保育園と比べると放課後児童クラブ(=公立学童)の開所時間が短いことや利用希望者が多く、そもそも入所できず子供の放課後の預け先がない、などの環境変化によって、これまで勤めてきた仕事を辞めざるを得ない状況となることを指します。また、多くの学校行事やPTA活動が平日に開催されること、長期休暇時の対応など、これらの負担も「小1の壁」に含まれる場合があります。
一般的には、子供が小学生になると「手がかからなくなる」と思いがちです。しかし、実際は保育園時代よりも働き方に制限がかかることが多いため、職場においても、テレワーク、在宅勤務、柔軟に働ける制度など、当該者に配慮・整備していくことが大切です。
<小1の壁が起こる背景>
1.親の仕事時間と子の登下校時間が合わない
保育園では、一般的に朝は7〜8時頃から、夜は延長保育も含めて19〜20時頃まで子供を預けることができました。しかし、小学校入学後は、登校時間が8時頃と親の出勤時間よりも子供の登校時間が遅くなったり、下校後に子供を預ける学童保育も「閉所時間が18時」「延長保育なし」など、保育園時代よりも子供を預けられる時間が短くなることが多いです。加えて、企業側が設けている時短勤務制度も、小学校入学を機に利用できなくなることが多く(※)、親は、働き方の調整を迫られます。
※育児介護休業法における育児のための短時間勤務制度は、3歳未満の子がいる者に対しては義務、小学校就学前の子がいる者に対しては努力義務
2.そもそも学童に入れない
厚生労働省が2021年に発表した「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)実施状況」によると、公立学童に入りたくても入れない待機児童は、約1万3000人とされています。共働き世帯の増加で利用希望者が年々増えているため、支援員の不足、施設の数や定員の問題などからこのような状況が生じています。政府は、2018年の「新・放課後子ども総合プラン」で2023年までに30万人分の学童を整備する予定としています。
3.学校活動への親の参加が増える
保育園では多くの保護者が就労していることもあり、園行事やPTA活動の開催も保護者へ配慮されていることが一般的です。一方、小学校では平日に授業参観や個人面談などの学校行事、加えてPTA活動があります。働いている親の場合は、有給休暇などを取得して参加せざるを得ない日が増えますが、特に1年生の場合は、入学してから年間行事予定が知らされることもあるため、入学直後の4月は特に、急な仕事の調整が必要なこともあります。また、毎日家庭での宿題チェックを求められることが多く、宿題の丸付けや音読を聞いてサインするなど、親が管理することが増えます。
4.長期休暇がある
小学校入学後は、夏休みや冬休みなど長期休暇が発生します。学童保育は開所しているのが一般的ですが、学校給食がないため、毎日昼食のお弁当を作る必要があり、多くの親の負担になります。また、開所時間は8〜9時頃と学校の登校時間よりも遅いケースもあり、前述のように仕事の時間との調整がさらに必要になることもあります。