採用活動は、採用して終了ではありません。すぐに辞められてしまったら意味がないからです。定着・戦力化までを見据えた採用活動について考察します。(2024年3月19日)
黒字リストラの理由
近年、大手を中心に、好業績でも早期退職を募る「黒字リストラ」を敢行する企業の報道がなされています。背景にあるのは、少子高齢化の進行による人口減少社会への対応です。将来、国内マーケットの縮小と働き手不足を避けることはできず、経営体力のあるうちに企業構造を見直し、再構築を図るための足掛かりと言えます。
東京商工リサーチによると、2023年に早期・希望退職を募集した上場企業は41社(前年38社)でした。その内訳を直近の決算でみると、黒字は21社(51.2%)で半数を超えています。企業は、DXへの対応やグローバル競争を勝ち抜くための人材を必要としており、そのための人事施策の1つが外部からの獲得です。黒字リストラの目的は、社内の年齢構成や配置を見直し、組織の新陳代謝を図ることにあります。
組織の新陳代謝は、企業が存続し続けるために必要なことでもあります。採用した人に定着してもらうことは大切ですが、ずっと同じ人たちでやっていくことはできません。家庭や個人の事情はもとより、定年による退職はさけられません。人事戦略はそもそも、人材流動化を前提として考えなければならない側面があると言えます。
辞めることを前提とした人事戦略
では、人材流動化、つまり人が辞めることを前提とした人事戦略とは、どのようなものでしょうか。端的に言えば、人が辞めても新たに応募者がやってくる企業になることであり、言い換えれば、応募者から働きたいと思ってもらえる企業になることです。
ですが、それを実現するのは簡単なことではありません。誰もが気持ちよく働ける環境を目指して、制度の設計や取り組みのトライ&エラーを繰り返し、ブラッシュアップし続けていく必要があります。具体的に言えば、良好な人間関係を築くためのコミュニケーションの促進や休みが取りやすい環境の実現、公平な評価制度の運用などです。
それと同時に大切なのが、早く辞めそうな人を採らないことです。応募者に働きたいと思ってもらえる企業になるには、その企業で働く人たちが気持ちよく働いていなければなりません。もし早く辞めてしまう人がいたら、その人は企業の考え方や方針に合わず、不満を持って働いている可能性が高いと言えます。
程度によりますが、自社に不満を持っている人がいる企業で働きたいとは思えないのではないでしょうか。それをさけるには、自社に合った人を採用する必要があります。
●文/三宅航太
2004年、株式会社アイデム入社。東日本事業本部データリサーチチーム所属。同社がWebサイトで発信する「人の戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務に従事する。さまざまな記事の作成や数多くの企業を取材。