医療従事者は職業柄、高いストレスを抱えています。そのため、医療現場では積極的に心の健康を保つ取り組みを行っています。医療現場のメンタルケアを解説します。(2025年10月2日)
13年間、私は医療の現場に身を置いてきました。職場はナースステーションです。主に急性期病棟のクラークとして職務にあたり、死亡診断書の取り扱いから1日が始まることもありました。医療従事者は「人の命をあずかる」という極限のプレッシャーの中で働いています。小さな判断ミスが命に関わる―そんな緊張感の中、日々神経を張りつめながら現場に立ち続けています。一見、特殊な環境のように見えますが、そこに潜むストレスの引き金は、さまざまな職場に共通しています。
ストレスを溜め込まないためには自分をケアすることが大切で、それは多くのビジネスパーソンにも共通することだと思います。今回は、多くの職場に共通する3つのストレスと、ストレスの引き金を知る5ステップについて、医療現場での経験と心理カウンセラーとしての視点から解説していきます。自分の心を守るヒントを探っていきましょう。
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「失敗は許されない」という責任感やプロ意識は、誇りであると同時に「弱音を吐けない」「常に完璧でなければ」と自分を追い詰める原因にもなります。医療従事者は命に関わるという仕事柄、責任感が強く、プロ意識の高い人が多いです。そのため、「自分が全部やらなきゃ」「迷惑をかけてはいけない」と思い込みがちで、心の余裕がなくなってしまいます。
医療現場では、仕事の重圧をやわらげる工夫として「チームで支える」という仕組みを取り入れています。例えば、看護師のチームで、医師からの指示を受ける役割と、実際に患者さんをケアする役割に分担します。それぞれが与えられた役割を的確に果たしながらも、問題が起きたらチームで話し合ったり、助け合ったりして、「個人」ではなく「チーム」として仕事にあたります。チームで責任を担うことは、医療事故の防止にもつながります。この「連携の意識」は、一般の職場にも応用できます。人に頼ることを「甘え」ではなく「連携」と捉えることで、責任感に押しつぶされることなく、働き続けることができるのです。
※チーム体制は一律に行われているわけではなく、医療機関の体制や方針によって異なります
【ストレス要因�◆柩�想と現実のギャップ
「もっと患者さんに寄り添いたいのに、業務に追われてできない」―医療現場では、こうしたジレンマが日常です。時間や人手の制約の中で理想どおりに動けないことが、罪悪感や無力感につながります。これは、例えば教育や接客などの仕事で「もっと丁寧に対応したいのに余裕がない」といった悩みを持つことと同じで、理想と現実のギャップが広がると「自分はできていない」と感じてしまいがちです。
そこで医療現場では、患者さんのお名前を呼ぶときに目を合わせるようにしたり、スタッフ同士で一言ねぎらいを添えたりするなど、ギャップを埋める取り組みを行っています。小さなことかもしれませんが、完璧を目指すのではなく、「今の自分にできる丁寧さ」を積み重ねることが理想と現実のギャップを埋め、心を守る力になります。
【ストレス要因��】人間関係の摩擦
重篤な患者さんの容態による急な指示変更や情報の行き違いは、摩擦や誤解を生みやすく、大きなストレス要因になります。
職場でも、急な依頼や方針変更に対応する中で「言った・言わない」「なぜ自分ばかり」といったすれ違いが起きやすくなります。
医療従事者は何度でも「もう一度、確認してもいいですか?」「今の内容で伝わっていますか?」と確認や声かけをします。その一言が医療事故を防ぎ、信頼関係を保つことにつながります。どのような職場でも「察してほしい」ではなく、意識的に声をかけることで、安心して働ける関係を築くことができます。
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●文/吉村園子(よしむら そのこ)
株式会社Tree 代表取締役、心理学の学校Tree 代表理事、上級心理カウンセラー、行動心理士、米国NLP協会認定NLP プラクティショナー
独自のカウンセリングメソッドを活かし、「上からでも下からでもなく、横からそっと心に寄り添う」をモットーに活動を行っている。心理学セミナーやグループコンサルを年間200回以上実施、個別のカウンセリングやコンサルティングは延べ3000人以上を数える。著書に『一瞬で気持ちを切り替える脳内ひとりごと』(三笠書房)、『40年間おデブだった私がリバウンドなくスッキリ-13kgやせた!!マインドフルネスダイエット』(主婦の友社)。