「丁寧にフィードバックを伝えているのに、部下の行動が変わらない」
「変わったように見えても、しばらくすると元に戻る」
こうした悩みを抱える管理職の方は少なくないのではないでしょうか。
人材育成というと、教え方の工夫に意識が向きがちです。しかし、どれだけ丁寧にフィードバックをしても、受け手がそれを受け入れる準備をしていなければ、成長にはつながりません。
受け手の受け入れる準備のことを、コーチャビリティと呼びます。言い換えれば「教わり上手さ」のことで、これが備わっていなければ教える側がどんなに丁寧なフィードバックを行っても身につきません。
本稿では、部下のコーチャビリティが高まるように、管理職(フィードバックを行う側)にできる2つの準備について整理します。
コーチャビリティとは何か?
先ほど、コーチャビリティを「教わり上手さ」と言いましたが、厳密に言えば「個人の成長とパフォーマンス向上を促進するために、建設的なフィードバックを求め、受け入れ、実行する意欲と能力」(Weiss & Merrigan, 2021)のことです。重要なのは、コーチャビリティがフィードバックをする側ではなく、受け取る側のスキルセットとマインドセットを扱う概念だという点にあります。
私は、コーチャビリティを「フィードバックを求める・受け入れる・実行する」というスキルセットと、それを支える「自己肯定感・目的意識・成長志向・自己効力感」というマインドセットの二層構造で整理しています。
そして、ネガティブで本質的なフィードバックほど、受け手のマインドセットの状態によって「受容できるかどうか」が分かれます。
フィードバックを行う側の管理職は、部下のコーチャビリティを高めるためにどんな準備をすればいいのか、解説していきます。
管理職にできる2つの準備
【準備� 朶浜�職自身がコーチャブルである姿を見せる
部下のコーチャビリティを引き出すうえで、土台となるのは管理職自身の振る舞いです。
部下は、上司である管理職が「自分の意見や指摘をどう扱うか?」を、日々の言動から観察しています。意見を出しても受け止められず、行動も変わらない経験を重ねれば、次第にフィードバックを控えるようになり、「言っても無駄」「波風を立てるだけ」という認識が内面化されていきます。
逆に、管理職自身が部下からの意見を真摯に受け止め、咀嚼し、必要があれば自らの行動を変える姿を示せば、職場全体に「フィードバックは成長のための資源だ」というメッセージが伝わります。仮に意見を取り入れない判断をした場合でも、その理由を返すことで、対話としてのフィードバックの価値は損なわれません。
率先垂範が組織のコーチャビリティを高める鍵だと言われるのは、こうした構造があるからです。
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土台を整えたうえで次に重要となるのが、フィードバックの伝え方です。さきほども言及したとおり、本質的でネガティブなフィードバックであるほど、受容できるかどうかはマインドセットの状態によります。
例えば、「資料に使う色の種類を減らしてみたら?」というフィードバックは、多くの場合さほど抵抗なく受け入れられます。一方、「あなたの丁寧な口調が、かえって部下を遠ざけているかもしれない」というフィードバックは、容易には受け入れられないでしょう。
両者の違いは、フィードバックが「受け手の人間性・価値観・アイデンティティのどこまで深いところに触れているか?」にあります。深く触れるほど、受け手の防衛反応を引き起こしやすくなるため、受け手のマインドセットへの配慮が必要です。
マインドセットへの配慮の具体的な方法として、2つご紹介します。
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●文/廣松啓太(ひろまつ けいた)
フォスターリンク株式会社 組織・人事コンサルタント
一橋大学商学部卒業後、株式会社ユーグレナ入社。直販事業立ち上げの中で、主にフルフィルメント業務全般の立ち上げと整備に従事。同社IPO後に起業を経て、2015年、組織の人事に関するさまざまな支援を行っているフォスターリンク株式会社に入社。国内の中堅・中小企業を中心に、組織設計・要員計画・人事制度設計/導入等のコンサルティングサービスや組織開発・人材開発の支援を行っている。