2026年10月1日、パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが見直されました。今回の改正では、労働条件の明示事項の追加、「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正、企業に求められる雇用管理上の措置の見直しなどが行われています。特に注目すべきは、「各種手当」と「休暇制度」に関する考え方がより具体化された点です。
さらに同じタイミングで、いわゆる「106万円の壁」の見直しも進み、税制面では課税最低限の引上げも行われています。企業には非正規社員の待遇改善が求められる一方、人件費管理はこれまで以上に難しくなっています。人事労務担当者や中小企業経営者の視点から、今回の改正が「何を意味するのか?」を整理してみたいと思います。
まず振り返りたい「同一労働同一賃金」の本質
同一労働同一賃金という言葉から、「正社員とパート社員をまったく同じ待遇にしなければならない」と誤解されることがあります。
しかし制度の本質はそこではありません。同一労働同一賃金が求めているのは、「均等待遇」だけではなく「均衡待遇」です。職務内容や責任、人材活用の仕組み(転勤・配置転換の有無など)が異なれば待遇差は認められます。
一方で、その待遇差が不合理なものではないことを、待遇の目的や職務内容などに照らして説明できることが重要です。重要なのは、「同じ雇用区分だから支給する」ではなく、「その待遇を支給する目的は何か」です。今回の改正では、こうした考え方が、手当や休暇などについてより具体的に示されました。
今回の改正のキーワードは…?
2026年改正では、裁判例等を踏まえてガイドラインが見直され、賞与、退職手当、家族手当、住宅手当、福利厚生、夏季・冬季休暇などの考え方がより明確化されました。特に、家族手当、住宅手当、無事故手当、褒賞制度、夏季・冬季休暇などが挙げられます。
ここで企業が最初に行うべきことは、「なぜその手当を支給しているのか?」を整理することです。
例えば家族手当。生活補助として支給しているのであれば、相応に継続勤務が見込まれるパートタイム・有期雇用労働者にも、その目的は当てはまる可能性があります。改正ガイドラインでは、継続的な勤務が見込まれるパートタイム・有期雇用労働者について、正社員と同一の家族手当を支給することが必要となる場合がある、と整理されています。一方で住宅手当については、転居を伴う配置転換の負担補填という趣旨であれば、同様の配置転換がある労働者には同様の支給が求められます。
つまり、「正社員と同額支給すべきもの」「均衡的に支給すべきもの」「支給対象外として合理的に説明できるもの」を切り分ける必要があります。今回の改正は、まさにこの「待遇の目的を明確にすること」」を企業へ求めているのです。
見落とされがちな「夏季・冬季休暇」
多くの企業が見落としやすいのが、夏季休暇・冬季休暇です。改正ガイドラインでは、休暇の目的・性質が同じであれば、パートタイム・有期雇用労働者にも正社員と同様に付与するという考え方が示されています。
例えば、正社員には夏季休暇を3日付与し、その3日間を有給扱いとしている企業があります。もし夏季休暇の目的が「心身のリフレッシュ」「猛暑期の健康確保」「ワークライフバランス向上」であるなら、その目的はパート社員にも当てはまります。
これまでは、正社員には夏季休暇を付与していても、パート勤務者には同じように付与していない企業もありました。しかし今回の改正を機に、「なぜ正社員だけに夏季・冬季休暇を付与しているのか?」を改めて検討する必要があります。休暇制度についても、制度の目的に立ち返った再点検が必要な時代になったといえるでしょう。
※最新号のみ、会員登録(無料)なしで閲覧いただけます
●文/岸川宏(きしかわ ひろし)
株式会社アイデム 人と仕事研究所 所長、社会保険労務士
大学卒業後、リゾート開発関連会社へ入社。飲食店部門での店舗運営を経験後、社会保険労務士資格を取得。社会保険労務士事務所にて、主に中堅・小規模企業の労務相談、社会保険関連手続きに従事した。1999年、株式会社アイデムに入社。賃金データの調査分析、労使関係に関する意識調査等、労働環境の実態に迫る情報提供に従事。採用時だけではなく、採用後の人材の定着、育成、戦力化と、人的戦力確保のための環境づくりに資する総合的な情報の提供に努めている。