第16回「やる気が空回りしている育休明けの女性部下」
現場マネジャーに向けて、リーダーとしての心構えやマネジメントの手法などを解説します。
女性が抱えがちな葛藤や不安をまずは理解すること
大手金融機関のシステム開発を担当する関連会社で働く入社10年目の女性の話です。彼女は、1年間の育児休業を経て、職場に戻ってきました。10〜16時という短時間勤務制度を活用しています。育休を取る前は、リーダー的なポジションを任されており、新人の教育指導や会議の運営など、率先して部署を引っ張ってきた“バリキャリ”派でした。
もともと優秀な人材で、周囲からの評価も高く、本人にも上昇志向があるので、夫から、子供のためにも母親に専念することを勧められても、「今まで、せっかく築いたキャリアを中途半端にしたくない」と復帰を決意したということでした。仕事と家庭を両立させて、会社でも成果を出したいという思いが人一倍強いようでした。
彼女の上司は、時間的な制約があるので、仕事の割り当てに悩んだそうですが、まずは徐々に慣れてもらうために補助的な仕事を任せたところ、本人から、「もっと仕事を任せてほしいんです。できれば以前と同じ業務の担当を希望します。短時間勤務だからと、限界があるように決めつけないでください」と懇願されたらしいのです。 この部署は、チームではなく、個人で担当する業務が多く、もし、彼女を元の業務に戻すとしたら、新たにフォローする体制を作る必要があります。
そのうえ他の社員は、ただでさえ多忙を極めており、時短勤務の彼女に対して、「やる気が空回りしているんじゃないですか」と、迷惑そうな声もチラホラ出てきている様子。もし特別な体制を組むとなると、周囲から一気に不満が噴出しないとも限らない状況です。 この部署の上司は、「そもそも時間的制約があるのに、他の社員と同じ条件で評価したのでは、周囲からの納得感が得られないのでは…」と、この状況に悩んでいます。
さて、あなたなら、この女性社員に対してどのようなアドバイスをしますか? 組織の中ではありがちな話ですね。こんな場合、頭ごなしに「無理をしちゃあダメだ」と決めつけるようなコミュニケーションは禁物です。まずは、じっくりと相手の深層心理に働きかけて、「なぜそんなに焦っているのか」を聞き出すことが肝心です。働いていると、結婚・出産・子育て・介護など、人生の中で予期せぬライフイベントに直面することがあります。とりわけ女性は、そんな悩みに陥ることが多いものです。
まずは、女性が抱えがちな葛藤や不安について理解し、共有するところからスタートしましょう。具体的には、どんな葛藤や不安があるかというと、
�〔ね茲悗稜�然とした不安を抱えやすい(対未来) 今後のキャリアを考えるにあたって、仕事とプライベートがどうなっていくのかが想像できない。どうなるか予測もできないということから、将来に対して漠然とした不安を抱え込みやすいということです。
�⊆�囲への負い目を抱えやすい(対職場) 時短勤務の場合など、周囲の通常勤務の社員や過去の自分と比較し、現状とあるべき姿の間で葛藤が生じ、「自分だけが頑張れていないのでは」、「自分がふがいない」などと、ついつい感じてしまうことがあります。
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)など多数。連絡先:info@planet-5.com
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