採用が難しい時代です。求人を出しても、思ったような人材から応募が来ない。そもそも応募自体が少ないとお困りの方は多いでしょう。人口減少がますます加速していく中、人手不足の状況はこれからも続くことが予想されます。
求人難の突破口として、ここ数年、注目を集めているのが既存の従業員から友人、知人を紹介してもらうリファラル採用です。リファラル(referral)とは紹介・推薦という意味で、社員の紹介・推薦を通して人を採用する手法のことです。
メリットとデメリット
リファラル採用は、その他の求人メディアから応募に来た人よりも、応募者の素性がはっきりしているので安心して採用できます。事前に職場の情報を紹介者から聞いているでしょうから、ある程度の状況は把握しているので、教育やマネジメントがスムーズに行えます。
また、紹介してくれた人が採用に至り、任意の期間を継続して勤務すれば、紹介者にインセンティブを支払うのが一般的ですが、有料の求人メディアで募集するよりはコストが下がるというメリットがあります。
一方でデメリットもあります。面接をした結果、採用基準を満たしていなくても、紹介者に気を使って、採用せざるを得ない場合もあります。学生アルバイトで、学校が同じであれば、試験期間や学校行事などがある日に、一緒に休まれてしまうとシフト組みが難しくなります。また、どちらか一方が辞めるとなると、一緒に辞めてしまうというケースも少なくありません。そういうリスクもあることを織り込み済みで雇用しなければなりません。
リファラル採用で入社したスタッフを、どうマネジメントすればよいのでしょうか?
リファラル採用の事前準備
まずは、事前準備としてスタッフに紹介を依頼する際に、以下の説明を行います。
・紹介制度を利用して採用面接を行っても、採用基準を緩めることはないので、不採用となる場合があること
いわゆる縁故採用の場合、採用面接は形式的なものとなり、面接を受けるまでもなく、採用が確定しているというのが普通です。でも、そうなると先にお伝えしたように、基準を満たしていなくとも、採用せざるを得なくなるケースが出てきます。自社にとって、ふさわしくない人が入社してくると現場が混乱しますし、マネジメントが機能しなくなります。
リファラル採用の制度を導入する際は、制度の説明に加えて、「どういう人物が必要なのか?」について、スタッフに詳しく説明します。友人だからと言う理由だけで、紹介してもらったとしても、自社(店)にマッチしないことがあります。ミスマッチが起こらないようにするために、例えば「性格は?」「仕事観は?」「価値観は?」などと言った具合に、自社(店)にふさわしい人物が持つ要素を細かく定めていき『理想の人材像』を明確にして、それをスタッフと共有し、自社(店)にとって必要な人物を紹介してもらいましょう。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『人材マネジメント一問一答』(商業界)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
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