既存スタッフや採用したスタッフに定着してもらうために、企業は「どんなことを考えればいいのか」「何を準備をすればいいのか」などを解説します。(2024年2月29日)
分からせるではなく、分かってもらう
スタッフに指示を出したのに指示通りに動いてくれず何度も説明をする、といった経験はありませんか。あるいは、指示通りにやろうとしないスタッフに説教をしたけど、何も変わらない。そんなスタッフもいることでしょう。
そうしたスタッフを、管理職としてはそのまま放置するわけにもいきません。指示通り動かない理由はスタッフ自身によるところと、管理職としての関わり方の問題があります。
管理職がついやりがちな、よくない関わり方があります。それは、スタッフに対し「分からせようとすること」です。管理職からの『分からせようとする行為』を、スタッフは『今ここで分からなければならない』とプレッシャーに感じ、腑に落ちていなくても分かったふりをして行動することになります。
その結果、そのときは動いてはくれても、また指示通り動かなくなります。腑に落ちていない行動を繰り返すことでモチベーションが下がり、管理職への不満が募ることも考えられます。すると、スタッフだけでなく、組織もよくない方向へ進んでしまう可能性があります。
管理職は、指示したことをスタッフに『分からせる』のではなく『分かってもらう』のです。似たような言葉ですが、スタッフ側から見れば大きく異なります。『分からせる』とは管理職がスタッフを説得する行為であり、『管理職がスタッフに分からせる』のです。『分かってもらう』とはスタッフに納得してもらう行為であり、『スタッフが自ら理解し分かる』ことです。スタッフが主語で、スタッフが主体性を持っているところが大きく異なります。
正論で話すのは逆効果
各企業がこぞって多様性(ダイバーシティ)を推進する中で、「とにかく上司の言うことを聞け!」といった関わり方をする管理職は、まずいないかとは思いますが、理解してもらおうと正論で話せばよいわけでもありません。たとえ正論でスタッフを論破しても、スタッフの行動は変わりません。それどころか全くの逆効果となります。
なぜなら、正論も『分からせようとする行為』だからです。正論は自分自身の考えが正しい前提で話をしており、スタッフの行動や考えを受け入れていません。多様性を受け入れていない行動と言えます。
また、指示通りでないことの指摘を正論で言われてしまうと、それが図星であればあるほど、スタッフは言い返すことができません。するとスタッフは、言われた自分を責めるか、言った管理職に反発を覚えるか、のどちらかになります。いずれにせよ、スタッフは負の感情にとらわれ、指示を受けたことよりも感情が先に立ち、管理職の指示通りに動いてくれない結果となりやすいのです。
●文/森崎のりまさ(もりさき のりまさ)
職場いきいきコンサルタント。22歳から介護業界で働き始め、約20年間、現場に携わる。介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取得し、訪問介護管理者、老人ホーム施設長を経験。施設長を務めていたとき、一般的に離職率が高いといわれる介護施設で「2年間退職者ゼロ」を実現する。2021年、これまでの実績と経験を活かし、『仕事=楽しい』に変える職場いきいきコンサルタントとして独立。企業の社員研修や社員面談などを請け負い、職場の環境改善に尽力している。著書に『退職者を出さない管理者が必ずやっていること』(産学社)Amazonランキング人事部門1位。インターネットラジオ局『ゆめのたね放送局関西チャンネル』のラジオ番組『今日も明日もポジッピー』パーソナリティ。
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