「採用したスタッフが数週間で辞めてしまった…」
「求人をしても思ったような人材集まらない…」
現場のリーダー、経営者から悲鳴ともいえる声が私のもとに届きます。厚生労働省のデータによれば、中小企業(従業員数100人未満)において、新規採用者の半数近くが3年で離職している状況は10年以上前から変わっていません。
求人難も同様に続いています。なぜ、求人の応募が少ないのか? それは、求職者に必要な情報が届いていないことが大きな原因です。もちろん、求人情報サービスを活用すれば、求職者へ情報を提供することはできますが、加えて、自社サイトやSNSを活用するなどして、自社が求人をしていることを広く伝えることは欠かせません。しかしながら、そういう活動をしている企業は少数派です。
マーケティングとリクルーティングは同じ
私が登壇する商工会議所などのセミナーで、参加者にアンケートを取ったところ、「自社のWEBサイトに求人ページ」がある企業は約半数程度でした。SNSを採用活動に活用している企業は1割程度という結果になりました。
同じセミナー会場で、売上を作るために「ホームページやSNSを活用しているか否か」を尋ねると、9割以上の企業が「YES」と答えます。このように多くの企業では、売上を作るための活動については、複数のメディアを使い、顧客に情報を届けることを積極的に行っています。これをクロスメディア・マーケティングと呼びます。
一方、採用活動(リクルーティング)に関しては、求人情報サービスに広告を出すだけという企業が大半です。私は、マーケティングとリクルーティングは、『人を集める』という意味で、軸となることは同じと捉えています。マーケティングはお客様、リクルーティングは求職者を集めることが目的の活動であり、情報を届ける対象が違うだけです。
動画でリクルーティングを行う飲食店
大阪のA社(飲食店)は、若い世代のスタッフを採用するために、動画を使ってリクルーティングを行っています。その動画をYouTubeで公開し、自店のWEBサイトでも公開しています。
なぜ動画を活用するのか? その理由は、若い世代は情報をテキスト(文字)ではなく、動画で取る機会の方が圧倒的に多いからです。対象とする層が普段から触れているメディアで情報を伝えることは、マーケティングの定石です。
多くの場合、人手不足の飲食店では、料理を運んでもらうだけでよいと思い、頭数をそろえる採用を行いがちです。しかしながら、そうやって“来るもの拒まず”のスタンスで採用を行うと、自社にふさわしくない人物が入社することになりがちです。そうなると現場が混乱しますし、本人自身も居心地が悪いと感じるので、長くは続きません。結果、現場に数も質もそろわない状態が続くことになります。
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●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』(WAVE出版)、『人材マネジメント一問一答』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
https://okamotofumihiro.com/