(1)話がかみ合わない理由
職場で、話がかみ合わなかったり、部門間の連携がうまくいかなかったりすることがあります。こうしたすれ違いは、コミュニケーションのスタイルの違いが原因であることも少なくありません。人のコミュニケーションのスタイルは、大きく4つのタイプに分けられます。これは、人に対して「なぜ伝わらないのか?」「どうして話が合わないのか?」といった不満を感じたときの対応を考える上でのヒントになります。コミュニケーションスタイルの違いを知ることは、メンバーが主体的に動くチームをつくるうえで非常に大切なポイントです。
(2)コミュニケーションの4タイプ
コミュニケーションのタイプを意識して人に接することで、やりとりがスムーズになり、確認漏れや仕事の手戻りが減っていきます。その結果、チーム全体の生産性が向上していきます。例えば、スピードを重視する「ドライバータイプ」には、結論を先に伝えると行動に移してもらいやすくなります。感情豊かでエネルギッシュな「エクスプレッシブタイプ」には、共感を込めた声かけが効果的です。「楽しそうですね」といった一言でやる気が高まることがあります。
慎重で理論を重んじる「アナリティカルタイプ」には、「なぜその方針が必要なのか?」を丁寧に説明することで納得してもらいやすくなります。人間関係を重視する「エミアブルタイプ」には、急かすよりも「あなたの意見を聞かせてください」と丁寧に対話することが信頼につながります。こうしたタイプ別のコミュニケーションは、日常のやりとりにとどまらず、人材育成や組織づくりにも大きく役立ちます。リーダーやマネジャーが、メンバーのタイプに合わせて伝え方や接し方を変えることで、職場の空気がよくなり、成果にもつながりやすくなります。
(3)違いを認め合い、チームの力に変える
互いの違いを認め、強みを活かし合うことができれば、チームは自然と補い合う関係になります。しかし実際の現場では、相手が自分と違う考え方や行動をすると、「理解できない」「なぜそうなるのか?」と感じてしまうこともあります。そこで大切になるのが、「自分と違う価値観で動いているかもしれない」と、あらかじめ意識しておくことです。そうすることで、不必要な衝突を避けやすくなり、対話のきっかけも生まれやすくなります。
特にチームの中心にいるリーダーやマネジャーは、メンバー同士の違いを理解し、その間をうまくつなぐ力が求められます。一方の意見を尊重しながら、もう一方の立場や意図をうまく翻訳して伝えることで、チーム全体の関係性がスムーズになります。このように違いを活かす力は、単なる個人同士のやりとりにとどまらず、組織の価値観の共有や、風通しのよい職場づくりにも影響を与えます。
●文/伊藤じんせい
チームビルディングコンサルタント。大学卒業後、測量会社勤務、行政書士事務所開業を経て、世界的な経営コンサルタント、ジェームス・スキナー氏のセミナーでチームビルディングのメソッドを学ぶ。現在、スキナー氏が創業した有限会社トゥルーノースのビジネスパートナーとして、コンサルティング活動を行っている。支援実績として、半年間で金属加工会社の売上15%増・利益率10%増、食品卸売会社で売上4.3倍を実現。木工加工会社では下請け依存体質から脱却させ、新事業の売上1,800万円を達成。著書に『自走するチームの作り方』(つた書房)。