「人を育てるより、採用したほうがいい」は正しいのか?
中小企業の人事担当者の方に話を伺うと、必ず「人を育てるのには時間が掛かります。それよりも即戦力の人材を中途採用したほうが、うちのような企業では効率的だと思うんです」というような声が必ず聞こえてきます。
さて、本当にそうなのでしょうか?
確かに売り手市場の環境下では、中小企業の人材確保が難しくなることは否めません。企業そのものが有名で応募者が簡単に集まるような大手企業のことを「採用強者」と呼ぶなら、会社の存在自体が一般には知られておらず、何もしなければ誰も応募してこないような中小企業は「採用弱者」となります。
採用強者の大手企業は、自社に興味のある応募者を大量に集めて母集団を形成して、面接などで絞り込みながら動機付けをし、最終的に内定を出すというオーソドックスな流れで新卒採用を行います。一方の採用弱者である中小企業は、母集団形成そのものが難しく、相手を選ぶというよりも、何かしらの理由で相手から選ばれて初めて採用が可能になります。
つまり、採用弱者企業は採用強者企業と同じ土俵で戦うこと自体、勝ち目は少ないわけです。
図をご覧ください。これは「能力」と「人柄」の2つの軸で、どこを狙えばいいかというターゲット図になります。

採用強者企業は、当然ながら右上の「能力が高く、人柄も素晴らしい」領域をターゲットにして、この領域の母集団から選び取ればいいのです。しかし、採用弱者企業は、そもそもこの領域の人を採用ターゲットにしようにも、自社を相手にもしてくれないわけで、応募すらしてくれません。
この領域は、とりあえず諦めるというのが現実的な対処法かもしれません(ただし、訳ありの人は来てくれる可能性があります。訳あり人材の採用については、後半で話をしたいと思います)。
左下の「能力も人柄も?」の人はどうかというと、当然ながら採用をしないという領域なので、コメントする必要はないと思います。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。
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