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ココロの座標/河田俊男

第56回「孤独死が増えている」

人の心が引き起こすさまざまなトラブルを取り上げ、その背景や解決方法、予防策などを探ります。(2020年11月19日)

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訳あり物件

 

 不動産会社に勤務する知人が「最近、訳あり物件が増えたような気がする」と言う。「訳あり物件」とは不動産取引の用語で、建物やマンションに瑕疵(かし)がある物件のことだ。その中には「心理的瑕疵」と呼ばれるものがあり、自殺や孤独死など一般的に心理的嫌悪感をもってしまう物件を意味する。

 

 知人から2つのケースを聞いた。1人は30代男性。長い間家賃が未納で、保証会社は男性に「〇月〇日には支払います」という誓約書を書いてもらった。だが、期日になっても家賃は振り込まれない。担当者が部屋を訪ねると異臭がするので、警察官の立ち合いのもと、カギを開けて中に入ることになった。男性は自殺しており、部屋は「訳あり物件」になった。

 

 また、会社を辞めて再就職先が決まらずにいた48歳の男性が、自宅マンションで亡くなっていたことがあったという。連絡がつかないことを心配した母親がマンションを訪ねると、急性心不全で死後3週間が経過していた。

 

 

 

 

「孤独死」した人々

 

 工場勤務の一太は32歳で、機械いじりが好きだった。大人になったら自動車修理工になると決め、工業高校を卒業後、田舎を出て東京近郊の工場に就職した。勤務先の工場の業績悪化でリストラが始まったとき、一太は毎日のように残業して、その穴埋めをしていた。そんなある日、無断欠勤をした。上司が連絡してもつながらず、自宅を訪ねると急性心筋梗塞で亡くなっていた。

 

 58歳の浩之は長く勤めていた会社を早期退職して退職金で起業したが、1年で倒産させてしまった。さらに、起業時に仕事を手伝ってくれた女性と不倫関係になっていて、離婚して家を出ていた。その後、なかなか仕事が定まらず、1人住まいのアパートの家賃の支払いにも困窮するようになり、ある日、自宅のトイレで亡くなった。電話をしてもつながらないことに不安を感じた娘が自宅を訪ねたことで分かった。原因は大動脈瘤の破裂で、死後2週間がたっていた。

 

 会社の管理職をしている50代の慎吾は独身だった。3年前に同居していた母親が他界し、実家で1人暮らしをしていた。仕事帰りに最寄駅の近くにある居酒屋で一杯やるのが唯一の楽しみで、その日も店の常連たちと他愛のない話をして酒を飲んだ。夜中の1時頃に帰宅したが、翌朝脳出血で亡くなった。週末の休日で人に会う約束もなく、誰にも気づかれず、月曜日になって職場に出社しなかったことから発覚した。

 

 

問題はなにか?

 

 最近、孤独死が増えているようだ。高齢者ばかりではなく、30代、40代の人たちも孤独死している現実がある。過労やストレス、社会的な孤立、うつ病や身体疾患など、さまざまな問題が複合している。

 

 不動産会社のケースでは、30代男性は何らかの原因で引きこもりになり、うつ病にもなっていたと考えられる。残念なことに彼を心理的、社会的、経済的にサポートする人はいなかった。自宅マンションで亡くなった48歳男性や慎吾のケースは、何らかの身体疾患が進行していた可能性がある。しかし本人は兆候を感じることができず、突然亡くなってしまった。

 一太には蓄積疲労と、会社の業績不振という不安があった。何らかの不調があったように思うが、たとえ気づいたとしも、病院には行かなかったかもしれない。

 

 孤独死のほとんどのケースに、孤立が関連している。浩之は、離婚してから完全に孤立してしまった。起業の失敗もあり、うつ状態でもあった。家賃の支払いにも困窮していたので、身動きがとれない状態にあったと言える。そんな状況下で孤立を深めた。慎吾も母親が亡くなってからは話し相手もなく、私生活では孤立していた。職場での人間関係も希薄だったのかもしれない。

 

 

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●文/河田俊男(かわだ としお)
1954年生まれ。心理コンサルタント。1982年、アメリカにて心理療法を学ぶ。その後、日本で心理コンサルティングを学び、現在、日本心理相談研究所所長、人と可能性研究所所長。また、日本心理コンサルタント学院講師として後進を育成している。翻訳書に「トクシック・ピープルはた迷惑な隣人たち」(講談社)などがある。

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