スタート時は、大抵上司は不安、部下も自信がない状態
前回のコラムで、SL理論(正式には「Situational Leadership(状況対応型リーダーシップ)理論」といい、ポール・ハーシーとケネス・ブランチャードが共同提唱したもの)の話をしました。上司が部下の育成状況などに合わせて、柔軟に関わり方を変化させていくという考え方です。
今回のコラムからは、このSL理論をベースに私なりにアレンジした「部下の成長段階に応じた育成のステップ」について話を進めていきたいと思います。
まずは、図をご覧ください。

縦軸に「上司の安心度」、横軸に「部下の自信度」を設定しています。
例えば、新入社員は、どのあたりにプロットされるかというと、大抵左下のあたりで、上司は不安に思っていて、新入社員の部下もまだ自信がないという状態です。
この領域を「教えるマネジメント」としておきましょう。
たまに新入社員でも、自信満々で「どんな仕事だって、へっちゃらでできちゃいますから」なんて豪語する人がいますが、こういう新人に対して、上司はますます不安になってしまいますね(苦笑)。
ちなみに、今後の連載の中で、この図がどんどん「○○マネジメント」という形で、埋められていくので、期待してください。
教えるマネジメントのポイントをお伝えすると、知識やスキルや段取りなど、手順を踏んで学ばせるというものです。そして、大事なのは、「ほったらかしはNG」ということ。できるだけ接触頻度を高めるよう心掛けてください。具体的には、声掛けを頻繁にするとか、報連相を細かく要求するとかになります。
新入社員の場合、知識もスキルもないわけですから、ゼロから一人で考えさせても、何も生まれるはずはありません。新入社員に対しての放置プレイは、絶対にやってはいけないことなのです。
もし自分が忙しくて、接触頻度を高めることができない場合は、年次の近い先輩に教育係になってもらいましょう。最近では、仕事以外のプライベートでも、相談役ともいえる「メンター制度」を導入している企業が増えています。
「何か分からないことがあれば、この先輩に聞いてね」とか、「最初の2カ月間は、隣の先輩の仕事ぶりを観察して、どんなことでも学んで吸収してほしい」とか、身近な先輩の仕事ぶりは、とても参考になるものです。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。
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