はじめに
今回は「強みを活かす」にスポットを当て、記事を書かせていただきます。企業や組織において、社員や職員の「強みを活かすこと」と「弱みを克服すること」のどちらを優先すべきか、意見が分かれるところだと思います。私は、「強みを活かすことを優先すべき」という立場で、自身の考えを述べます。と言っても、私自身、部下の強みを十分理解できているわけではありませんし、できていない部分にばかり注目してしまうことも、しばしばございます。そのため、自戒の念を込めこの文章を書いております。
特にお伝えしたいことは、次の3点です。
�|�にでも、成果につながる強みがある
��苦手なことを平均的にできるようにするだけでなく、強みを磨くことで大きな成果を生み出せる
�4浜�職の重要な役割は、部下の弱点を指摘することだけでなく、強みを見つけ、活かせる仕事や機会を与えることである
これら3点について、すでに公開されている文献などの情報を踏まえ、私なりにまとめさせていただきます。
誰にでも、成果につながる強みがある
ポジティブ心理学や、クリフトンストレングスなど才能開発の研究において、「誰にでも成果につながる強みがある」ということは証明されています。ただし、これらには重要な前提条件があります。「強み」とは、最初から完璧にできる魔法の能力ではなく、「自身の思考や感情、行動パターン等を、適切な環境で正しく活かした結果」を指しています。
また、多くの人が「自分には強みがない」と誤解するのは、強みを「他者より圧倒的に優れた才能」だと考えているからです。しかし、本当の強みはもっと身近なものです。行動のクセ(高い責任感、実行力など)、思考のクセ(高い危機管理能力、慎重さなど)、感情のクセ(高い共感性、傾聴力など)がそれにあたります。自分では「息を吸うように当たり前にできること」なので気づきにくいのですが、他人から見ると「すごいこと」であり、それが強みの原石です。
その強みは、原石のままでは成果につながりません。「成果につながる強み」に育てるためには、次のようなステップを踏む必要があります。
�ー�己認識する。まず、自分の「強みの原石」が何なのか知ることからスタートします。自分には当たり前で、他人から見たら「すごい」ことは何なのか?それには、クリフトンストレングスやVIA-ISなどの強み診断もきっかけの一つです。
��環境を選ぶこと。その強みの原石である「クセ」が「価値」として評価される場所を選ぶことです。例えば、慎重で過度にリスクを気にする人が、スピード重視のベンチャー企業で新規事業に投入されると、成果が出ず「優柔不断な人」とみなされるかもしれません。しかし、同じ人が「金融のコンプライアンス部門」や「医療機器の品質管理」に入ると、その慎重さは「絶対にミスを許さない、極めて優秀な強み」として大きな成果につながる可能性があります。
��最後は、そのクセに、具体的な知識や技術を掛け合わせることです。
強みを磨くことで大きな成果を生み出せる
現代経営学、あるいはマネジメントの発明者であるピーター・ドラッカーは、その著書で以下の様に述べています。
人が何かを成し遂げるのは、強みによってのみである。弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑わしい。強みに集中し、卓越した成果をあげよ。
『マネジメント』(ピーター・F・ドラッカー/ダイヤモンド社)
強みのみが成果を生む。弱みはたかだか頭痛を生むくらいのものである。しかも弱みをなくしたからといって何も生まれはしない。強みを生かすことにエネルギーを費やさなくてはならない。
『経営者の条件』(ピーター・F・ドラッカー/ダイヤモンド社)
これらの文章を私が初めて読んだとき、パラダイムシフトしたのを覚えています。これまでは、「苦手なことを克服しなければならない」と考えていたのに、ここまではっきりと「弱みは気にせず、強みの強化に集中せよ」というメッセージはインパクトがあります。
私たちは多かれ少なかれ、苦手なことを克服することが重要だという考え方が染みついています。この考え方は、小学生のころから培われた「苦手科目をなくす」という教育が大きいと私は思っています。得意科目に力を入れるより、苦手科目を克服する方が伸びしろが大きく、総合点アップにつながるからです。しかし社会に出れば多くの場合、満点は100点ではなく、150点でも200点でもあり得ます。そんなことを気づかされます。通常、苦手なことをするより、得意なことをする方がやる気が高まります。
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●文/松嶋清和(まつしま きよかず)
株式会社アイデム 人と仕事研究所 キャリア開発支援チーム
インストラクショナルデザイナー、特定社会保険労務士、メンタルヘルス・マネジメント検定�擬�
大学卒業後、大手アパレル商社に勤務、全国の小売店との相談・折衝業務に従事する。その後1998年に株式会社アイデムに入社してからは、13年間に延べ3,000社以上の経営者・人事担当者らと面談。求人広告の営業担当として、採用および人材活用に関する提案を続けてきた。
2010年11月以降は同社「人と仕事研究所」にて、採用後の人材育成、教育・研修に特化した企画提案を行っている。また、自身も研修講師として登壇している。