【第34回】交渉を有利に進める「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」
商談や接客時など、ビジネスシーンに応用できる心理学の知識を解説します。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは?
フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは、はじめに小さな依頼を受け入れてもらい、次に本当に頼みたいことを受け入れやすくするテクニックのことです。OKしやすいことから始めて、そのOKしてもらった内容をどんどん大きくしていきながら承諾を得る方法です。
●解説
街を歩いていたときの事です。店頭に立っている若い女性から「健康ドリンクの新商品の試飲です。どうぞ」と声をかけられ、思わずサンプルを手に取って飲みました。飲み終わった後に簡単なアンケートを頼まれたため、気軽に引き受け答えました。
アンケートを書き店員さんと話しているうちに「今ならお試し価格でご購入いただけます」と言われ、結局10本ほど購入することになったのです。よく分からないうちに必要ないものを買ってしまった…。そのような経験を誰しも一度はした事があるのではないでしょうか?
この心理を応用した説得の方法をフット・イン・ザ・ドア・テクニックといいます。これはセールスマンが、片足を入れてドアが閉まらないようにしてしまえば、もう売ったも同然だというところからきているものです。まずはハードルの低い用件をお願いして、徐々にハードルを上げ購入へと誘い込む方法です。
それではフット・イン・ザ・ドア・テクニックをクロージングに応用してみましょう。
あるお客さまと商談していたときの事です。最終見積を出しクロージングをしました。いい雰囲気で話が進み、私が「それでは契約の手続きに進みたいと思いますが、まず契約金が…」と言ったとたんお客さまの顔色が変わりました。いい雰囲気が一転「契約の手続きは少し待って下さい」と拒否されたのです。
「契約金」という言葉に抵抗感を覚えたのでしょう。お客さまはその直後から、身構えてしまったのです。もう少しデリケートに進めればよかったと深く反省しました。
別のお客さまとの商談です。お客さまに対してクロージングのチャンスが巡ってきました。ここで前回のミスを繰り返さないようにと、このように言いました。
私「大きめのハンコはお持ちですか?」お客さま「実印は普通のハンコより少し大きめですが」私「それは良かったです。契約書の割り印が押しやすいのです」お客さま「そうですか、では実印を持ってきますね」
いきなり「契約の手続き」というのではなく、「大きめのハンコはありますか?」というような比較的抵抗のないことからお話し、最後に契約の手続きや契約金のお話をしたのです。その結果、細かく慎重なお客さまにもかかわらず全く抵抗なく契約へと進んだのです。
どんなにうまく進んでいるお客さまでも契約になると身構えるものです。クロージングが決まったからといって勇み足をしてはなりません。最後の最後こそデリケートに進めましょう。
菊原智明●営業コンサルタント/関東学園大学経済学部講師。大学卒業後、大手住宅メーカーに入社し、営業部に配属。7年間のダメ営業マンから4年連続トップ営業マンへ。現在は【訪問しないで売る】営業コンサルタントと大学で学生に向け【営業の授業】を行っている。著書に『訪問しないで「売れる営業」に変わる本』(大和出版)、『トップ営業マンのルール』(アスカビジネス)など多数。http://www.tuki1.net/
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