第18回「何が分からないのか」すら分からない人を育てるには?
現場マネジャーに向けて、リーダーとしての心構えやマネジメントの手法などを解説します。
教えなければならない部下を放置する上司は意外に多い
部下に対してフェアでなければならないのは、上司としては当然のことです。しかし、部下全員に対して同じように接することがフェアだと勘違いしている上司の人もいます。部下のタイプや成長段階に応じて、部下との関わり方も変わります。相手に合わせた対応をしてこそ本当のフェアな姿勢なのです。
例えば、ベテラン社員と中堅社員、新入社員とでは、日常のコミュニケーションのレベルも内容も変わってきます。手のかかる社員もいれば、阿吽の呼吸でいろんなことを理解してくれる社員もいます。それぞれとの打ち合わせの時間も、部下によって変わってしかるべきなのです。
部下の成長に合わせたマネジメント上のかかわり方を3つの段階に分解すると、
■第1段階の「教えるマネジメント」 新入社員や業務未経験に対してのアプローチ手法になります。業務遂行に必要な知識やスキル、手順や段取りなど、具体的に教えていきます。本人の希望や意思などを聞くことはあっても、むしろ「まず、やってみようよ」と有無を言わさず、やらせてみることが肝要です。
■第2段階の「促すマネジメント」 一人前として認められるようになってきた中堅社員へのかかわり方が、この段階で、部下に自信を持ってもらうことが主眼になります。一方的に教えるのではなく、「どうすればいいと思う?」「3つの案のうちオススメはどれ?」など、相手の中にある答えを引き出すアプローチです。小さな成功体験を積ませ、自信を持ってもらうことが重要です。
■第3段階の「任せるマネジメント」 マネジメントの理想形とも言えるのが、この「任せるマネジメント」。かなりの部分を権限委譲できる部下なら、目的と背景を伝え、自由と責任を付与して、細かく干渉することなく、要所を押さえておけばいいのです。量的なコミュニケーションは減っていきますが、会話の中身のレベルは高くなっていきます。
「任せるマネジメント」のレベルの社員なら、ある程度の放任はあってしかるべきですが、まだ「教えるマネジメント」の領域にいる社員に対して、「これ、明日までにやっておいて」とか、「自分で考えてまとめてみろ」などと、乱暴に仕事を振ってしまう上司は、大きな過ちを犯しています。 「任せる」のと「放置」は全く違いますし、ましてや「教える」べき部下に放置プレイをしていたのでは、部下も成長しませんし、成果も上がるはずがありません。
成果=やる気×スキル×知識
これは、成果の公式と呼ばれるものです。同じスキルや知識を持っている人なら、やる気が高いほうが間違いなく成果が上がります。 しかし、やる気が万能というわけでもありません。そもそもスキルと知識がない人に対して、やる気だけを上げても、気持ちが空回りするだけです。いくら「飛行機の操縦をしたい」と、やる気が満々な人でも、どのスイッチが何かを知らなければ、滑走路を走ることすらできません。
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)など多数。連絡先:info@planet-5.com
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