独立行政法人 労働政策研究・研修機構は、調査シリーズNo.236「企業の賃金決定に係る調査」の結果を発表した。
当調査は「経済が回復に向かう中で、「成長と分配の好循環」の実現に向けて、持続的な賃上げが重要となっている。企業収益が改善しつつある中で、企業が賃上げに踏み込めない背景として、先行きの成長が見込めないことや、世界的に不確実性が増していることなどがあげられており、企業収益の見通し・先行きや、賃金改定に当たって考慮する要素、賃上げへの企業の態度との関係性を調査するため」としている。
調査対象:全国の従業員数30人以上の企業10,000社。有効回収数:2,530件(有効回収率:25.3%)
調査期間:2023年1月31日〜2月20日(調査時点:2022年12月末日現在)
【結果のポイント】
<2.賃上げに係わる状況から>
◆2022年の賃上げの実施状況について、「定期昇給」(76.0%)が最も高く、「非正規雇用者・パート労働者の昇給」(49.0%)、「賞与(一時金)の増額」(39.2%)、「ベースアップ」(36.2%)、「諸手当の改定」(23.3%)、「新卒者の初任給の増額」(20.6%)などが続く。「以上のいずれの賃上げも実施していない」は7.1%だった
◆「賃上げを実施した理由」は、「社員のモチベーションの向上、待遇改善」が67.9%と最も高く、次いで、「最低賃金の引上げに対応するため」が46.7%、「社員の定着・人員不足の解消のため」が41.5%、「業績(収益)の向上」が19.9%、「新卒採用の人材確保のため募集時賃金を上げたいから」が16.9%、「物価上昇への対応」が16.7%などとなっている
◆賃上げを実施した企業における効果としては、各項目の該当割合(「そう思う」「ややそう思う」の合計)を集計したところ、「既存の社員のやる気が高まった」が32.3%と3割の企業があげており、「社員の離職率が低下した」が17.6%、「企業イメージが向上した」が12.0%などとなっている
◆「以上のいずれの賃上げも実施していない」を選択した企業において、賃上げを実施しない理由は、「業績(収益)の低迷」が70.0%と最も高く、次いで、「雇用維持を優先」「物価高騰によるコスト上昇(急激な円安傾向、エネルギー価格の上昇等含む)」がいずれも40.6%、「固定費(所定内給与)の増加を避けたい」28.2%、「将来の不透明感」26.5%、「価格転嫁できない」22.4%などとなっている