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判例に学ぶ労使トラブルの処方箋/岡正俊

賃金全額払いの原則に、例外は認められるか?〜N社事件(最高裁H2.11.26判決、労判584号6頁)〜

近年、労働関係の訴訟は社会的関心が高まり、企業にとって労使トラブル予防の重要性は増しています。判例をもとに、裁判の争点やトラブル予防のポイントなどを解説します。(2023年4月25日)

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【事案の概要】
 本件は会社と従業員が互いに持っている債権について、会社と従業員との間の合意によって「相殺することができるか」が問題となった事案です。
 
 労働基準法の賃金の支払いに関する原則として、通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則があります。この4月から可能になった賃金のデジタル払いは通貨払いの原則の例外になりますが、本件は全額払いの原則の例外として「合意相殺が認められるか」が問題になりました。





 事案の内容は少し複雑です。従業員は会社からだけでなく、銀行や労働金庫からも借りています。また、従業員が破産したことから、従業員本人ではなく破産管財人が原告となって相殺を否認しています。ですので、ここでは簡単に従業員の意思に関わる点をあげておきます。

 従業員は住宅資金のために借入をし、その返済については、毎月の給与、年2回の賞与、退職金等により返済することとされていました。ですが、破産してしまったため、従業員は連帯保証人の同僚に迷惑をかけないよう、借入金の残債務を退職金、給与等で返済する手続をとってもらうよう会社に依頼し、会社はこれを了承しました。

 また、会社に対し「今般私儀退職に伴い会社債務(住宅融資ローン残高)及び労働金庫債務の弁済の為、退職金、給与等の自己債権一切を会社に一任することに異存ありません」との委任状を交付しています。
 その後、会社から清算処理の明細書を交付し、退職金計算書等に署名押印を求めましたが、それにも異議なく応じました。


【裁判所の判断】
 裁判所は、全額払いの原則(労基法24条1項本文)について、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止することで、労働者に賃金の全額を確実に受領させて経済生活を脅かすことのないようにして「保護を図ろうとするものである」としました。

 この趣旨から、使用者が労働者に対して有する債権で「労働者の賃金債権と相殺することも禁止されている」としました。もっとも、労働者が相殺に同意し、この同意が労働者の自由な意思に基づいたと言える合理的理由が客観的に存在するときは、同意による相殺は「全額払いの原則に違反しない」としました。但し、全額払いの原則からすると、同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならないとしました。
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につづく
 

●文/岡正俊(おか まさとし)
弁護士、杜若経営法律事務所代表。1999年司法試験合格、2001年弁護士登録(第一東京弁護士会)。専門は企業法務で、使用者側の労働事件を数多く取り扱っている。使用者側の労働事件を扱う弁護士団体・経営法曹会議会員。
https://www.labor-management.net/
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