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個人の働き方や企業の人事労務、行政の労働施策など、労働に関するニュースを取り上げ、課題の解説や考察、所感などをつづります。(2019年9月5日)
最低賃金が上がるとどうなる?
「最低賃金が上がると、失業率が上がる」という考え方があります。引き上げに対応して従業員の賃金を上げたとき、人件費にかかる割合が増します。売上が一定ならば利益は減ったままなので、オーナーの取り分が減ります。今までと同様にオーナーが稼ぐには人件費を元の額・割合に戻す必要があり、従業員の解雇につながる…という流れです。より悪い例として、人件費の高騰によって会社の倒産が続出し、急激に失業者が増え、失業率がぐんと上がるという場合も考えられます。
その一方で、「生産性の低い企業は廃業等然るべきで、それが日本全体の生産性向上につながる」という考え方もあります。倒産企業で働いていて失業してしまった方は、稼ぐために別の仕事を探すことでしょう。その時、存続している企業は倒産企業より高い賃金が払えることになるため、収入が以前に比べ増加します。労働人口が減少し人手不足が各所で聞こえる現在、新たに職に就くことは比較的容易であり、企業の淘汰が進む…という流れです。
一瞬でも職がなくなることは不安につながりますし、だからといって安い賃金で長時間働くのも避けたいです。ゾンビ企業・ブラック企業と称される会社から人々が解放されるとしたら良いことですが、同時に、淘汰が行き過ぎて人件費アップを吸収できる大手しか生き残れず、地方の過疎化が加速するのではとも思ってしまいます。最低賃金に関しては各国で議論がなされています。引き上げが先か、生産性向上が先か、など様々な見解があり、学術論文ではCard and Krueger(1994)などの実証的研究が有名ですが、調査地域や調査方法、環境の違いもあり決着はついていません。
最低賃金の地域格差
日本の地域別最低賃金は、2007年に最低賃金法が改正されてから、生活保護との整合性に配慮すること、通用除外規定を廃止し減額特例許可規定を新設、派遣労働者には派遣先地域(産業)に適用される最低賃金が適用になる等が定められました。これ以降、東京都では10円超の引き上げが当たり前のようになりました。2016年以降は、25円以上の引き上げとなっています。
そしてついに2019年10月1日には1,013円となり、時給1,000円では求人広告が出せなくなります。今回の改定で地域別最低賃金が1,000円を上回る地域は、東京都のほかに神奈川県があります。神奈川県では、2019年10月1日以降1,011円に改定されます。大阪府が3番目に高く、2019年10月1日以降964円になります。
厚生労働省の中央最低賃金審議会ではこれまで、「年率3%程度を目途として全国加重平均が1000円に」なることを目指してきました。今年度の審議では「より早期に全国加重平均が1000円に」なることを目指した審議を進め、今後より一層引き上げ幅が高くなることが予想されます。今回の改定で、全国加重平均は901円になる予定です。年率3%超のペースで全都道府県の改定が進めば、4年後の2023年には1,000円を超える計算になります。
求人広告を取り扱う弊社では、改定に先駆けてお客様への周知、広告の対応等すすめているところです。そんな中、前線で動いている営業現場からの共有で「これ以上高くなってほしくない」「いま雇っている従業員への対応でいっぱい」といった、お客様のお声をいただくこともあります。同一県内でも都市部と山間部では経済事情に隔たりがあるなど、地方最低賃金審議会でも言及されているところです。
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◆労使の意見は何年も「不一致」
◆神奈川県ではパート・アルバイトの半数以上の募集に影響
◆最低賃金法の目的と基準
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●文/関 夏海(せき なつみ)
2014年、株式会社アイデム入社。データリサーチチーム所属。賃金に関する統計・分析を担当。Webサイトで発信している労働関連ニュースの原稿作成なども行っている。
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