会社がなくなる日
日々、流れてくる、労働関連の多彩なニュース。本コラム欄では、アイデム人と仕事研究所の所員が、そうしたニュースに触れて「思うこと」を、持ち回りで執筆します。
1万人超の人員削減
近年、円高や海外メーカーの台頭などから、かつて日本経済をけん引してきた製造業が厳しい局面に立たされています。
先日、経営再建中の大手総合家電メーカー、シャープは大規模なリストラを行うことを発表しました。海外工場などの売却も行い、最終的に1万人を超える人員削減を目指すようです。企業規模が大きいため、余波の影響も懸念されています。
国内で同社グループと直接取引のある企業は2000社以上、総従業員数は54万人超という調査もあります。製造業全体の景気が良くないことに加え、同社からの受注が減ったことで、人員削減をせざるを得ない状況に追い込まれた下請け企業もあります。
企業寿命は30年
ひところ、「企業寿命は30年」という説が話題になったことがありました。1983年、日経ビジネスが企業の総資産額のランキングを元に、「企業にも寿命があり、優良企業であっても盛りは30年まで」という分析結果を導き出したのです。
それから29年が経過した2012年現在、企業を取り巻く経営環境は、インターネットの普及による情報化やグローバル化、また規制緩和の波にさらされるなど、厳しいものとなっています。さらに言えば、ライフスタイルや価値観の多様化、絶え間ない技術革新などの影響で、社会の変化が激しくなり、1つの事業が利益を生み続けるスパンが短くなっているのではないかとも考えられます。
企業寿命の短縮がますます進み、将来的には、転職が必須のものになるという予測もあります。
勤務先がなくなった
最近、私のまわりでも職を失った人がいます。30代後半の既婚男性です。入社10年になる勤務先の外資系メーカーが日本からの撤退を決め、会社を清算することになったのです。数年にわたって赤字が続いており、事業を継続しても業績の回復は見込めないとの判断から従業員500人が解雇されるそうです。
再就職にあたっては、会社が契約した就職支援会社のサポートを受けられるといいます。
しかし、30代後半という年齢や厳しい雇用情勢などから、自分の希望に沿った仕事を見つけるのは難しく、再就職活動は苦戦しているようです。夫婦共働きで子供はいないので再就職は一刻を争う状況ではないですが、決して楽観できるものではありません。
政府は今年7月に、2020年までの成長戦略を盛り込んだ「日本再生戦略」の原案を発表しました。環境や医療・介護、観光などの成長分野で新しい市場を創出し、480万人以上の雇用を生み出す計画です。しかし、目標実現に向けた具体策に乏しく、再生への道筋は見えていません。
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●文/三宅航太(みやけ・こおた)
株式会社アイデム人と仕事研究所研究員。大学卒業後、出版社の営業・編集、編集プロダクション勤務を経て、2004年に株式会社アイデム入社。同社がWEBで発信するマネジメントなどに役立つ情報記事の編集業務に従事する。人事労務関連ニュースなどの記事作成や数多くの企業ならびに働く人を取材。
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