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アイデム人と仕事研究所の研修部門の所員が、日々の業務やお客さまとの対話から感じたことなどをつづる「人材育成のツボ」。今回は、“事例で学んだ「研修効果を倍増させる方法」”です。
弊社のお客さまにはショッピングセンターを運営するデベロッパーさまが多くいらっしゃいます。
そのお客さまのうち、とあるショッピングセンターの長であるA氏から、「わが“SC”は“ショッピングセンター”を超えて、地域の“ソリューションセンター”となることを目指したい」という話を伺いました。
そもそもショッピングセンターとテナント企業との関係は、テナント企業への「場の提供」にとどまらず、ビジネスパートナーとして理念やビジョンを共有できることが大前提であるとのこと。
また、テナントで働くスタッフは、ショッピングセンターの広告塔であり、看板であると考えていらっしゃり、スタッフの接客応対力は、ショッピングセンターの質をはかるスケール(ものさし)だと言っても過言ではない、と言い切ります。
その考えから、テナントのスタッフの教育、育成を、テナント企業に任せっきりにしていないとのことです。
特に入店前研修はデベロッパーさまが主体となって行い、決まりごとを伝えるだけはなく、ショッピングセンターの成り立ちや目指すところをしっかりと伝えるそうです。このことで、たとえアルバイトの方でも、ここで働くことに誇りを持ってもらえます。これが、活き活きと働くスタッフを多く輩出している秘訣だともおっしゃいました。
加えて、例えば、笑顔が溢れるお店作りをしよう!というショッピングセンターの目標を設定したならば、それを全テナントの全スタッフに受けていただく研修企画に反映させ、実施するという、ショッピングセンター全体の取り組みも仕掛けていらっしゃいます。
この、全体を巻き込む研修の実施には、テナントのスタッフ同士の横のつながりを強くするという効果もあるのだそうです。横のつながりが強くなれば、お客さまに提供する情報の幅も広がり、このショッピングセンターにはどのようなテナントがあって、お客さまが求めていることがどこで解決できるのかが、互いに理解できるようになります。
例えば、「今日の夕食のおかずは何にしようか」、「手持ちの洋服とうまくコーディネートできるものはないか」といった、お客さまの抱えているさまざまな課題を解決するためには、自店の商品を売るだけでなく、もし目の前のお客さまに最適な商品が隣のテナントにあれば、迷わずそれを紹介する。お客さまの冷蔵庫の中身を聞いたならメニューのヒントを伝え、その結果、今日のお買い上げにつながらなくても、それはそれでいい。お客さまのタンスの中にある服を上手くコーディネートして、まだ使えることを提案すれば、新しい服が必要になったときにその店を訪れてくださる。
まさに課題解決をするという視点が大事であると考えていらっしゃるのです。
お客さまとの息の長いおつきあいをすることが最優先であり、目先の利益にとらわれない精神があってこそ、ショッピングセンターを超えて、お客様の課題解決の場、ソリューションセンターとなることを目指せるとA氏は考えていらっしゃるのです。このA氏の思いを受けとめ、その期待にこたえられるご提案を、これからも行ってまいります。
●文/大野博美(おおの ひろみ)
アイデム人と仕事研究所チーフプランナー/主任講師/キャリア・コンサルタント
NHK報道局社会部で100名強の報道記者の勤務管理などのサポート業務、弁護士事務所の事務スタッフを経て、現在、アイデム人と仕事研究所で企業の教育・研修のプログラム作成、講師を担当。キャリア・コンサルタントとして新卒者、求職者の支援も行う。教育・研修を企画する際は、クライアント企業の要望をしっかり受け止め、さらにその奥にある潜在的なニーズを掘り起こすことを常としている。
また、自ら講師、キャリア・カウンセリングを担当し、受講生や求職者との触れ合いを大切にしている。講師としては明るく歯切れの良い研修を行うこと、カウンセリングでは的確なアドバイスをすることを心がける。企業のリーダー指導にも携わり、教える側の悩みに寄り添う仕事にも力を注ぐ。
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