「人材の活用」「従業員の教育」「人事制度」等について、事例満載の記事や専門知識が深まるコラム等を展開。自社の活性化や雇用管理のヒントに!

「経営者やパート従業員の意識」等について、さまざまなデータを作成。労働市場の現状が分かります。

*一部記事の閲覧および機能をご利用いただくには、会員登録(無料)が必要です。会員登録はこちら

「平均時給 の検索」「時給の平均や動向」等について、データを作成。労働市場の現状が分かります。

*一部記事の閲覧および機能をご利用いただくには、会員登録(無料)が必要です。会員登録はこちら

アイデム人と仕事研究所では、「ビジネスマナーのブラッシュアップ」「新入社員の戦力化」「職種別・階層別の知識・スキルアップ」等につながるセミナーを開催しています。

*一部記事の閲覧および機能をご利用いただくには、会員登録(無料)が必要です。会員登録はこちら

判例に学ぶ労使トラブルの処方箋/岡正俊

納会での急性アルコール中毒死は労災?〜S労基署長事件(東京地裁平成27.1.21判決)〜

近年、労働関係の訴訟は社会的関心が高まり、企業にとって労使トラブル予防の重要性は増しています。判例をもとに、裁判の争点やトラブル予防のポイントなどを解説します。(2022年10月25日)

< 1 2 >

【事案の概要】
 原告の夫であるAは、勤務先の会社主催の納会で飲酒し、急性アルコール中毒を発症するなどして亡くなりました。原告は、Aの死亡が業務上の事由によるものであるとして労災を申請しましたが、不支給とされました。そこで原告は、国を相手に不支給処分の取り消しを求めて提訴しました。

 

 

 

 

【裁判所の判断】
 労災が認められるためには「業務遂行性」と「業務起因性」が必要になります。「業務遂行性」とは、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあることを言います。業務を行っている場合だけでなく、事業主の「支配下にある」と評価される場合も含まれます。

 

 裁判所は本件の「業務遂行性」について次のように判断しました。本件の納会は、仕事納めの日の社内清掃後における1時間ないし2時間程度の懇親、慰労の趣旨で、任意参加で行われたものです。裁判所は、会社代表者から「よほどの事情がない限り参加するように」と言われていたものの、参加を強制されていたとまでは言えないとしました。

 

 しかしながら、納会は、会社内において会社が主催し、会社の費用全額負担の下、飲食物を用意した上で、所定労働時間を含む時間帯に開催されたものでした。代表者を始め従業員全員が参加し、所定労働時間の勤務を前提とした「賃金が支払われている」といった事実から、業務の延長線として会社の支配下にあったとして「業務遂行性」を肯定しました。

 

 一方、「業務起因性」とは、業務に内在する危険性が現実化したと評価されることを言います。要するに、普段は表面上見えなかったとしても、元々危険な状態が起こる可能性があり、実際にそれが現実化した場合です。

 

 裁判所は本件の「業務起因性」について、Aの飲酒行為が納会の目的(懇親、慰労)を逸脱した過度の態様によると認められる場合には「業務起因性」が認められないとしました。つまり、そのような過度の飲酒は懇親、慰労のための納会にひそむ危険性が現実化したものではなく、労働者本人が「自ら危険な行為を行った」と評価されるということです。本件ではAがほぼ1人で日本酒一升を飲み切り、酩酊状態になっていたこと等から、裁判所は本件において「業務起因性」は認められないとしました。

 

 結論としては、「労災不支給は違法ではない」として、原告の請求は棄却されました。

 

 

>>>次ページにつづく

※次ページ以降の閲覧には、会員登録(無料)が必要です
<会員サービスのご案内はコチラ>
につづく

 


●文/岡正俊(おか まさとし)
弁護士、杜若経営法律事務所代表。1999年司法試験合格、2001年弁護士登録(第一東京弁護士会)。専門は企業法務で、使用者側の労働事件を数多く取り扱っている。使用者側の労働事件を扱う弁護士団体・経営法曹会議会員。
https://www.labor-management.net/

< 1 2 >

この記事のキーワード

クリックすることで関連する記事・データを一覧で表示することができます。

一覧ページへ戻る

2ページ目以降をご覧になるには、会員ログインが必要です。
会員登録(無料)がお済みでない方はこちら

会員登録(無料)はこちら

その他のコラム記事を見る

人気記事ランキング

ヒトがあつまる職場/田中和彦

[第9回「上司が部下に謝ることができる組織」]
企業は、ずっと同じ人たちで運営していくことはできません。人が辞めても、また入ってくる職場について考察します。

判例に学ぶ労使トラブルの処方箋/岡正俊

[仮眠時間は労働時間に当たるか?〜T社事件(最高裁H14.2.28判決、労判822号5頁)〜]
近年、労働関係の訴訟は社会的関心が高まり、企業にとって労使トラブル予防の重要性は増しています。判例をもとに、裁判の争点や予防のポイントなどを解説します。

時事トピックス

[2050年、3分の2の都道府県で「5分の1世帯が高齢者単独世帯」]
人事労務関連のニュースの中から、注目しておきたいものや社会の動向を捉えたものなどをピックアップしてご紹介します。
注目のコンテンツ

人と仕事研究所Facebook