人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2023年9月21日)
非常に多様化してきているハラスメント
昨年(令和4年)から、パワハラ防止法が中小企業などすべての事業主に対して義務化されたこともあり、多くの企業でハラスメントについての勉強会が開かれるようになりました。防止措置が適切に講じられていないと、是正対象になり企業名が公表される規定もあり、企業も迅速な対応を求められているからです。
しかし、経営層や人事部の危機感に比べ、現場の意識はまだ大きくかけ離れている気もしています。とくにハラスメントについては、種類も増えてきていますし、内容も非常に多様化してきています。
ここ最近、職場で問題になってきたハラスメントを以下に紹介しましょう。
●パタニティ・ハラスメント(パタハラ) 〜男性の育児休暇の取得や時短勤務の申請に対して、不利益な扱い、不当な評価、嫌がらせを行うことです。
●リモート・ハラスメント(リモハラ) 〜リモートワーク中に発生するハラスメントで、セクハラやパワハラに関するものが多く見受けられます。
●ソーシャル・ハラスメント 〜SNSなどのソーシャル・メディアを通して行われるハラスメントで、写真や動画の無断投稿による嫌がらせや、上司が部下に友達申請を迫るなどが起きています。
●ジェンダー・ハラスメント 〜性別によって役割を決めつけるなど、固定観念による嫌がらせなどで、「女性はお茶くみ」「男性だから重労働」などが代表例です。
他にも、香水や柔軟剤などによるスメル・ハラスメント、耳障りな音を立てるノイズ・ハラスメントなど、多様なハラスメントが職場で問われてきているのです。
パワハラにしても、「職権などの力関係を利用して」というと、上の立場から下の立場に対して、つまり、上司や管理職が加害者で、部下が被害者というイメージを持たれることが多いものですが、必ずしもそれだけではありません。長くその部署にいる人が、新しく異動してきた個人を無視することや、人格を傷つけるような言葉の暴力など、同僚同士のパワハラも少なくありません。
また、部下のほうが専門知識や特別なスキル・技術力を持っている場合では、業務未経験の上司をばかにすることや、命令を無視する行為もパワハラに該当します。
つまり、部下の立場でもパワハラの加害者になることがあるのです。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。