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シゴトの風景

第127回「令和的・飲みニケーション金払い事情」

働く個人にこれまでのキャリアや仕事観を聞き、企業が人を雇用する上で考えなければならないことを探ります。(2024年4月25日)

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「自分が20代だった頃、上司と飲みに行って財布を出した記憶はほとんどありません。だから、20年ぶりに会社員になって上司とサシで飲みに行ったときには、とても驚きました」
 Webサービス会社で働く川瀬結大さん(仮名・45歳)は、大学卒業後に大手情報サービス会社に就職。3年半ほど働いた後、フリーランスのライターとして活躍していたが、安定収入を求めて45歳のときに正社員になった。そして、10歳ほど年上の上司と飲みに行き、割り勘だったことにビックリした。

 川瀬さんいわく、おごってくれないことに不快感を覚えたのではなく、「気前よくおごって部下にいいところ見せたい」という感覚がないことに驚いたという。
「その上司は、部下の前で偉そうな態度を取る典型的な“昭和のサラリーマン”。そのため、飲みの席でも昔の自慢話を聞かされたり、説教されたりと、全然楽しくないんです。それなのに、割り勘っておかしくないですか?」




 自分が20代だった20年ほど前は、上司が部下におごる文化が残っていたという川瀬さん。“おごりカルチャー” が定着していた時代に若手だった彼にとって、20年後のカルチャーになじむのは大変なようだ。
「今は、男女間でも割り勘が当たり前と言われるような時代。しかも、給料が上がらないわりに、物価上昇でみんな苦しんでいます。飲みに行くたびに部下におごっていたら、上司も生活がまわらないですよね…」

 もしかしたら自分が“浦島太郎状態”なのかもしれないと思い、川瀬さんは友人たちとの飲み会の席で聞いてみた。新卒で入社した会社で頑張り続けてきた友人の多くは、川瀬さんと違って多くの部下を抱える上司の立場。会社の飲み会のリアルを知るうえで、とても参考になったという。
「『部下とサシのときはおごる』というメンバーが多かったものの、それ以外は思いのほか、割り勘派が多かったですね。今どき、1次会は全額出し、2次会は1万円札を渡して自分は帰るみたいな太っ腹な上司は、絶滅危惧種のようです」

 川瀬さんが一番驚いたのは、「そもそも部下を飲みに誘わない」という友人が複数人いたこと。その理由が、「パワハラ認定されたら怖いから」だと知って、さらに驚愕した。
「自分が何のしがらみもないフリーランスとして働いている間に、職場の人間関係がそこまで変わってしまったとは思ってもみませんでした。『飲み会に参加すると、残業代は出るんですか?』なんて平気で質問してくる若手までいるらしいです」

 職場である程度の地位に就く友人たちの話を聞いて、“オールドルーキーの平社員”でよかったと心から思ったという川瀬さん。ただ、部下の顔色をうかがって飲みに誘わないという友人の話を聞いて、自分の上司の態度に怒りを覚えたという。
「職場で昭和のノリが通じる平社員は、もはや私くらい。だからこそ、その上司は私をよく飲みに誘うんでしょうね。確かに、若手を誘っているのを見たことはあまりありません」
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