私は新人類である。正確にはバブル世代である。
こういうと、今の若い方には「このおじさん何言ってるの?」と思われそうですね。新人類とは一定の世代を表す言葉で、Z世代と同じようなものです。明確な定義はないらしいですが、1950年代後半〜1960年代後半生まれあたりといわれることが多いようです。私は1960年代後半生まれですので新人類世代か、そのあとのバブル世代に分類されます。
新人類と呼ばれたのは生まれたときではなく、我々世代が社会人になるときです。その当時の管理職層から“今までの常識では推し量れない考え方や行動をする「新人類」”という意味合いでつけられた呼称です。ガンダムに出てくる「ニュータイプ」(TVアニメ『ガンダムシリーズ』に登場する架空の概念)のようなカッコイイものではなく、「理解不能」という意味です。おじさんは、若者を理解できない。だから異質なものとして、ひとくくりにしてしまうのは、今に始まったことではありませんね。
そう、新人類であった我々は、今や「おじさん」なのです。「おじさん臭い」「おじさん構文」しまいには「働かないおじさん」とまで言われてしまう世代です。なんと揶揄されようとも、年功序列パワーの恩恵で「そこそこお給料もらっているから良いでしょう?」とも思われそうですね。
新人類世代の悲哀
1950年代後半〜1960年代後半に生まれた新人類世代(と、します)は、高度成長期・バブルと若い時期に豊かさを実感した世代。がゆえに、自分の趣味や個性を大切にするオタク文化の先駆け、高い消費志向が特徴とも言われ、お気楽、忍耐力がないともいわれました。入社当時はバブルがはじける前後で、就職活動に苦労した方は少なかったかもしれません。
新人類の働き方は、
A:メンバーシップタイプ
・若いころに我慢すれば、将来は好待遇
・退職金、退職年金で明るい老後
B:エグザイルタイプ
・今の自分にとって良いと思う働き方を選ぶ(フリーターというワークスタイルもこのころから)
・転職はいとわない
と、こんな感じのタイプが多かったように思います。いずれにしても好景気が続いていく前提で、バブル世代以降の方からもお気楽といわれても致し方なしですね。ですが、一生懸命仕事をしていれば給料も上がり、退職金と年金で楽しい老後が待っているという幻想は、バブルと同じくむなしくはじけ飛びました。
バブル経済の崩壊は、日本にとって大きな転換点でした。その余波は経済の低成長と賃金の停滞という形で長期にわたり日本社会に影響を与え続け、賃金の上昇が見込めない、不透明な未来が待ち受けていました。
企業においても、経費削減・生産性向上に迫られる中で、成果主義の下でプレイヤーとしての役割が強く求められる一方、人員のリストラや、人材育成費の削減といった人材への”コストカット”が行われ、管理監督者としての教育を受けずに来たものも少なくはありません。結果、管理職層は弱体化し、働かないおじさんを育成する一因になったのかもしれません。
●文/岸川宏(きしかわ ひろし)
株式会社アイデム 東日本事業本部 マネージャー(キャリア開発支援チーム/データリサーチチーム)、社会保険労務士
大学卒業後、リゾート開発関連会社へ入社。飲食店部門での店舗運営を経験後、社会保険労務士資格を取得。社会保険労務士事務所にて、主に中堅・小規模企業の労務相談、社会保険関連手続きに従事した。1999年、株式会社アイデムに入社。賃金データの調査分析、労使関係に関する意識調査等、労働環境の実態に迫る情報提供に従事。採用時だけではなく、採用後の人材の定着、育成、戦力化と、人的戦力確保のための環境づくりに資する総合的な情報の提供に努めている。