令和5年10月末時点での外国人労働者の数が初めて200万人を超えました。在留資格別に見ると、最多は「専門的・技術的分野の在留資格」595,904人(前年比24.2%増)、次いで「技能実習」412,501人(前年比20.2%増)となっています。
技能実習生は建設業や製造業、介護分野などで多く活躍していますが、さまざまな問題も起きています(技能実習制度は見直しが決定しており、新制度になります。詳細は後述します)。今回は、病気になっても病院に行こうとしない技能実習生への対応について解説します。
■今回の事例
主任のAさん(35歳男性)は、ベトナムから来た技能実習生Bさん(20歳女性)に製造業務の指導を行っています。ある日、Bさんが咳を繰り返していました。Aさんが体温計を渡して熱を測らせたところ、39度を超えていました。AさんはBさんに対して「病院に行った方がいい」と伝えましたが、Bさんは「病院に行くとお金がかかるので行きたくありません」と答えました。このような場合、どのように対応すればよいでしょうか?
■解説
健康を最優先にすることを伝える
まずBさんに、健康が最優先であることを伝えましょう。39度を超える発熱は仕事を続けるにはリスクが高いため、休息が必要であることを説明します。技能実習生の中には、親への仕送りや来日時の借金返済のために節約を優先する方も多いですが、健康を犠牲にしては本末転倒であることを理解してもらうことが重要です。次に具体的な対応として、3つのポイントをあげます。
(1)会社の規則やサポート制度を説明する
多くの企業では、従業員が病気になった場合に利用できるサポート制度(例:有給休暇や健康保険)が存在します。Bさんが金銭的な負担を心配している場合、会社がどのようなサポートを提供できるかを説明します。健康保険に加入している場合、病院の費用は部分的にカバーされることを伝え、金銭的な負担がそれほど大きくないことを理解してもらいます。
また、監理団体や受け入れ機関によっては、実習生が病気になったり、就業時間外の障害事故を起こしたりしたときにカバーするための団体保険契約(JITCO保険)を用意している場合があります。その場合、治療費用は国民健康保険や健康保険等の資格取得時期を考慮し、本国から一定期間は治療費用が100%補償されます。まずはこれらの確認を行い、必要な情報をBさんに提供しましょう。
●文/山田真由子(やまだ まゆこ)
山田真由子社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士、公認心理師、キャリアコンサルタント。26歳のときに3度目の受験で社会保険労務士に合格。さまざまな業種にわたり、約15年のOL 生活を経て、2006年12月に独立開業。現在、「誰もが輝く職場づくりをサポートする」をミッションとして活動している。経営者や総務部担当者などから受けた相談件数は延べ10,000件以上、セミナー登壇は1,500回以上を数える。著書に『外国人労働者の雇い方完全マニュアル』(C&R研究所)、『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル部長、それってパワハラですよ』(徳間書店)、『すぐに使える!はじめて上司の対応ツール』(税務経理協会)。