あと何年かで定年退職を迎えるにあたり、そろそろ年金の受給額が気になってきました。今までは、毎年誕生月に届く年金定期便を何となく、「こんな金額か、案外少ないなぁ」などと漫然と眺めていたのです。しかし、定年退職後の生活設計を考えるにあたって、あらためてしっかり確認しておかなければなりません。
年金定期便をあらためて確認してみると、自分1人の年金だけだと、しっかり働き続けなければ、暮らしていけないと思われる金額です。ただ、我が家は共働きなので、夫婦2人分の年金見込み額では、お小遣いを稼ぐ程度に働ければ、つつましやかには暮らせそうです。
しかし、これは2人が元気でいればこそ。もしも、夫婦のどちらか一方が亡くなったときには、遺族年金制度もありますが、受給できる年金額は2人分の年金額よりも少なくなってしまいます。
(あれっ、そう言えば、遺族年金が5年間しかもらえなくなると新聞で読んだような…。そもそも子どもがいない夫に、遺族年金は支給されるのだったかな…)
遺族年金とは
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受け取ることができる年金で、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。亡くなった方の年金の加入状況や各々の受給要件を満たしている場合に、いずれかまたは両方の年金が支給されます。
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者等であった方が、受給要件を満たしている場合、亡くなった方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が、遺族基礎年金を受け取ることができます。
一方の遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者等であった方が、受給要件を満たしている場合、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族が、遺族厚生年金を受け取ることができます。
2つの年金における受給要件の大きな違いは、遺族基礎年金は、子どもがいない配偶者には受給権はありませんが、遺族厚生年金は、子どもがいなくても、配偶者の性別と年齢によっては、受給権が発生することです。
(おっ、子どものいない夫でも遺族厚生年金は受け取れるかもしれないぞ)
遺族厚生年金制度の見直しについて
2025年に、5年に1度の年金制度が改正されます。その中には遺族厚生年金制度の見直しも含まれており、今年7月30日の社会保障審議会年金部会の資料では、男女差の是正を行っていく方針が示されています。資料を参考にしながら、見直しの方向性を確認していきます。
現行制度
子どものいない配偶者の遺族厚生年金の現行制度は、主たる生計維持者を夫と捉え、夫と死別した妻が就労し生計を立てることが困難であるとの時代背景から設計された制度となっており、30歳未満の妻に対しては5年間の有期給付、30歳以上の妻に対しては、期限の定めのない終身の給付が行われています。また、受給権取得当時の妻の年齢が40歳以上65歳未満である場合には、中高齢の寡婦のみを対象とする加算があります。
一方で、夫は就労して生計を立てることが可能であるという考えのもと、55歳未満の夫には遺族厚生年金の受給権が発生しないなど、制度上の男女差が存在しています。
●文/小杉雅和(こすぎ まさかず)
東日本事業本部 データリサーチチーム所属/社会保険労務士
大学卒業後、大手運輸会社に入社し、営業事務職に従事。その後、労働保険事務組合にて、労働・社会保険の各種手続き、相談業務に従事した。1998年、株式会社アイデムに入社。「パートタイマーの募集時時給表」等の賃金統計や「パートタイマー白書」等のアンケート調査を手がける。現在は労働市場に関する情報提供、各種アンケート調査の作成・分析を主に担当。