若い人材が「働きたい会社」を作るには?
年間1000冊のビジネス書を読む出版コンサルタントの土井英司さんが、人材の活用や育成などをテーマしたビジネス書を厳選して紹介します。
こんにちは、土井英司です。このコーナーでは、毎回テーマを決めて1テーマにつき3冊の関連書をご紹介しています。 今月は、若い人の働く意識を知るために読んでおきたい、とっておきの3冊をご紹介。今の時代、「給料をもらっているんだから」「上司の命令には従え」では、若い部下はついてきません。彼らのホンネを知ることで、採用もマネジメントもラクになるはずです。
『藤原先生、これからの働き方について教えてください。』 は、これから10年先の働き方について、教育改革実践家でベストセラー作家の藤原和博さんが予言した1冊。自身、大手人材サービス企業で部長職、メディアファクトリー創業、ヨーロッパ駐在、都内で義務教育初の民間校長、大阪府知事特別顧問、武雄市アドバイザーなど、さまざまなキャリアを歩んできた著者だけに、キャリアに対する多面的な見方が参考になります。
★藤原先生、これからの働き方について教えてください。(藤原和博著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/定価1,620円)
なかでも印象的だったのは、30〜40代がピークの「富士山型一山主義」ではなく、人生の後半に複数ピークがある「八ヶ岳型」を目指せという話。社会の変化が激しく、個人が長寿化する時代、複数の仕事を組み合わせてキャリアを考えるという著者の思想は、とても勉強になります。逆に言えば、企業の中で単一の専門性・キャリアしか磨けないとなれば、働き手は離れていくのかもしれません。
本書の中で、若い世代を活用するためのヒントが書かれていました。一人っ子で、幼少期から大人のなかだけで育った若者は、小さい頃から大人に「×」をもらうことが多いため、自信がないというのです。また、本書では失敗してもそこから修正する「修正主義」という考え方が説かれているのですが、ビジネスに当たり外れのある時代、企業としても失敗させる「余裕」を作ることは重要だと思います。自信を与える、失敗しても責めない、これらはこれから求められる職場の条件かもしれません。 また、本書には<社員が会社以外の豊かなリソースに目を向けることは、結果的に会社をも豊かにする>という記述があるのですが、オープンさもこれからの組織に求められる要素かもしれません。
続いてご紹介するのは、元マッキンゼーのコンサルタント、瀧本哲史さんが書いた『戦略がすべて』。本書は、瀧本さんがもともと連載していた『日経プレミアPLUS』の特集および連載「瀧本哲史の時事評論」、さらに『新潮45』の連載「逆張り(コントラリアン)日本論」を元に再編集したもので、新しい働き方に対する著者の視点が学べる、興味深い読み物です。
★戦略がすべて(瀧本哲史著/新潮社/定価842円)
本書のなかに、「システムA」と「システムB」という組織の分類が出てきます。システムAは、<大学教育を終えた、どのようなタイプにもなり得る「ジェネラリスト」を採用し、企業の中でゆっくりと下積みから スタートさせて、徐々に企業の文化、独自のノウハウを教育していくモデル>。システムBは、<新卒の従業員であっても、大きな権限を与えるモデル>です。
本書によると、グーグルでは「アソシエイトプロダクトマネージャー」という制度があり、新卒や第二新卒がいきなり新サービスを立ち上げるプロジェクトの責任者になるそうです。今後は、システムBを選ぶ若者が増え、システムAの企業は敬遠されるようになるかもしれません。
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●土井英司(どい えいじ)出版コンサルタント、ビジネス書評家、エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役。1974年生。慶大卒。オンライン書店アマゾンの日本サイト立ち上げに参画。数々のべストセラーを仕掛け、カリスマバイヤーと呼ばれる。現在、出版コンサルタントとして著者のブランディングからマーケティングまでをトータルで行う。プロデュースした書籍に、100万部を突破した『人生がときめく片づけの魔法』、シリーズ累計37 万部を突破した『年収200万円からの貯金生活宣言』など多数。著書に『成功読書術』(ゴマブックス)、『土井英司の「超」ビジネス書講義』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。http://eliesbook.co.jp/bbm
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