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働く個人にこれまでのキャリアや仕事観を聞き、企業が人を雇用する上で考えなければならないことを探ります。(2020年1月16日)
「高齢者だから運転は危険、という考え方は間違っていると思います」
病院の送迎ドライバーとして働く野佐光宏さん(仮名・75歳)は、高齢者が事故を起こすたびに話題になる「運転免許返納論」に憤りを感じている。
「確かに、アクセルの踏み間違いや逆走など、高齢ドライバーの暴走事故が多いのは事実です。ただ、日々ハンドルを握っていて思うのは、危険運転は何も高齢者に限った話ではないということ。猛スピード、急発進、無理な車線変更など、若者でも危ない運転をしているドライバーはたくさん見られます」
野佐さんは、ある公益財団法人に定年まで勤め上げ、65歳で病院の送迎ドライバーに転身。知り合いのツテで、自宅近くで働ける今の仕事を見つけたという。
「『人生100年時代』と言われる今、65歳からの人生はもはや余生とは呼べません。家にいても時間を持て余すし、身体もなまるので、『定年=リタイア』というのは避けたかった。そこで、車の運転なら慣れているので未経験でも大丈夫と思い、この仕事に就くことにしたのです」
軽ワゴン車で、定期的に通院が必要な人工透析患者の自宅と病院を往復。週3日、7時〜15時の勤務スタイルで、1日の送迎人数は10〜15人だという。ちなみに時給は950円。10年勤務して、やっと50円アップしたそうだ。
「人工透析の患者さんは、通院しないと生きていけません。ですから、送迎ドライバーは人の命を守る仕事。日々大きなやりがいを感じながら、働くことができています。患者さんからいただく、『ありがとう』の言葉が私の原動力。生活のためというよりも、社会とのつながりを大切にしたいという気持ちで働いているので、金額は問題ではないんです」
送迎する人工透析患者の年齢層は、40〜90代と幅広い。高齢の方が多いため、運転には細心の注意を払っているという。
「絶対に制限時速を超えないなど、安全運転を遵守。急ブレーキをかけると患者さんの負担になるため、車間距離をとって万が一の事態に備えています」
送迎ドライバーとして働く仲間は6人。その多くが、野佐さんと同じ70代だ。ただ、高齢ドライバーの事故が相次ぎ、社会問題化したこともあってか、雇い主である病院側はドライバーの若返りを図りはじめたという。
「最近になって、40代の派遣ドライバーが新たに加わりました。勤務時間の延長を打診されるほど人工透析患者は増えているので、私たちが急に辞めさせられることはないでしょう。ただ、高齢者の雇用にためらいを感じていることは伝わってきます」
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