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個人の働き方や企業の人事労務、行政の労働施策など、労働に関するニュースを取り上げ、課題の解説や考察、所感などをつづります。(2021年11月25日)
「妻が妊娠しまして…」
「嫁がコレ(お腹が膨らんでいる仕草)で…」
男性従業員からこういった報告があると、職場では「おめでとう!」「予定日は?」「性別は?」など祝福の声が飛び交うことが多いのではないでしょうか。もしかしたら、「実は、昨日子供が生まれました!」と完全に事後報告、というパターンもあるかもしれませんね。
では、その際に「育児休業どうする?」と自然に問いかけられる人はどのくらいいるでしょうか?
2022年4月から、改正育児介護休業法が施行されます。今回の改正は、男性の育児休業取得を推進するため、大幅な制度変更を伴います。企業としては、就業規則や規程の見直し、労使協定等の準備を進めなければなりませんが、実務フローに落とし込んだ対応も必要です。
例えば、社会的に男性の育児休業取得の推進がなされれば、当然、取得希望者も増えるでしょう。また、2023年4月からは、男性の育児休業取得率の公表が義務付けられます(一部企業)。そのような状況で、出生ギリギリまで男性従業員のパートナーの妊娠・出産予定を企業が把握していないとどうなるでしょうか。その男性従業員が育児休業を取得する場合、業務の調整や代替要員の確保がかなり困難になります。
そういったリスクを避けるためにも、男性従業員に対しては家族の状況などをどう把握するか、実務的かつセンシティブな問題にも現場では対応していかなければなりません。
ついに動き始めた「男性の育児休業」 その内容は?
改正育児介護休業法、今回の改正は概ね4月と10月の施行に分かれています。
●2022年4月1日施行
★義務1/妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する、個別の周知・意向確認の措置
事業主は、本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、以下の事項の「周知」と「休業の取得意向の確認」を、個別に行わなければならない。
<周知事項>
(1)育児休業・産後パパ育休に関する制度(制度概要)
(2)育児休業・産後パパ育休の申し出先(担当部署、連絡先など)
(3)育児休業給付に関すること(給付金について)
(4)労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
<個別周知 ・意向確認の方法>
(1)面談(オンライン面談もOK)
(2)書面交付
(3)FAX
(4)電子メール等
のいずれか ※(3)(4)は労働者が希望した場合のみ
<留意事項とポイント>
・労働者による育児休業申し出が円滑に行われるようにすることを目的とするものであることから、取得を控えさせるような形での周知及び意向確認はNG
・措置は、労働者が希望の日から円滑に育児休業を取得することができるように配慮し、適切な時期に実施することが必要
【例】
・妊娠・出産の申し出が出産予定日の1か月半以上前にあり→出産予定日の1か月前までに措置を実施
・妊娠・出産の申し出が出産予定日の1か月前から2週間前の間にあり→1週間以内に措置を実施
・子の出生後に申し出あり→できる限り速やかに措置を実施
★義務2/育児休業を取得しやすい雇用環境の整備を下記(1)〜(4)のうち1つ以上行わなければならない
(1)育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
(2)育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
(3)自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
(4)自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
<留意事項とポイント>
・複数の措置を行うことが望ましい
・(1)の「研修」は全労働者を対象とすることが望ましいが、少なくとも管理職については研修を受けたことがある状態にすることが必要
・(2)の「相談体制の整備」は、窓口を形式的に設けるだけでなく、実質的な対応が可能な窓口が設けられ、労働者に周知され利用しやすい体制を整備しておくことが必要
・(3)の「自社の育休取得の事例提供」は、当該事例の掲載された書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者の閲覧に供することが必要。提供する取得事例は、特定の性別や職種、雇用形態等に偏らせず、特定の者の育児休業の申し出を控えさせることに繋がらないように配慮することが必要
・(4)の「制度と育休取得促進に関する方針の周知」は育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示することが必要
※厚生労働省「育児・介護休業法の改正について〜男性の育児休業取得促進等〜」を基に作成
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●文/古橋孝美(ふるはしたかみ)
2007年、株式会社アイデム入社。東日本事業本部データリサーチチーム所属。求人広告の営業職として、企業の人事・採用担当者に採用活動の提案を行う。2008年、同社人と仕事研究所に異動し、企業と労働者への実態調査である『パートタイマー白書』の企画・調査・発行を手がける。2012年、新卒採用・就職活動に関する調査プロジェクトを立ち上げ、年間約15本の調査の企画・進行管理を行う。2015年出産に伴い休職、2016年復職。引き続き、雇用の現状や今後の課題について調査を進める一方、Webサイトのコンテンツのライティング、顧客向け法律情報資料などの作成・編集業務も行っている。
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