人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2022年7月21日)
問題の再発防止のためには、原因究明は不可欠
あなたの部署で何かしらの問題が存在した場合、どんな対処をすればいいか? 今回は、問題に直面したマネジャーが果たすべき役割について、一緒に考えていきたいと思います。
問題というのは、例えば、売上の低迷だったり、不良品の頻発だったり、システムの不具合だったり、根本的な課題解決を必要とするものをイメージしてください。突発的なトラブルやクレーム対応などとは違う内容の問題です。
なぜなら、突発的なトラブルやクレーム対応については、根本的な解決よりも、目の前の応急措置的な対応が求められます。スピードを優先させるため、原因究明は後回しにせざるを得ないからです。
なので、ここでは「原因究明よりも問題解決を優先させる」時間的に余裕のないケースではなく、「原因究明をしながら問題解決もする」時間的に余裕のあるケースに限った話を前提にします。
あらためて、なぜ原因究明が重要なのかというと、いくら問題が解決されても、その問題が起きた原因が特定されなければ、その後もやはり同じ問題が繰り返されてしまうからです。
病気も、対処療法ではなく、抜本的な治療をするから、再発することなく完治するのと全く同じです。再発防止のためには、原因究明は不可欠なのです。
とはいえビジネスの世界は、唯一無比の絶対的な正解があるわけではありません。数学の問題を解くように、明確な答えがスンナリ出てくるようなことはないのです。だから、「ここが問題の原因かな」と思うところから仮説を立てて、それを一つひとつ検証していく方法を取ることになります。これについては、誰も異論はないものと思われます。
ただ、意識しなくてはならないのは、立てた仮説を「一つずつ時間差を設けて」検証していくという進め方です。マネジャーの大切な役割は、どの順番で対応策の手を打っていくのか、その優先順位を決めることにあるといってもいいほどです。
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。