「採ってはいけない人」を絶対採らない採用
人を採用する会社の目指すところは、「入社後に活躍できる優秀な人を獲得すること」です。しかしその一方で、「入社後に問題になる可能性が高い人を確実に見極めること」という極めて重要なテーマがあることを忘れてはいけません。
「採ってはいけない人」を採用してしまうと、「期待はずれ」にとどまらず、恐ろしいことがたくさん起こります。人を採用する際には、「こんな人に来てほしい」というような期待以上に、「採ってはいけない人を絶対に採らないようにしなければ…」というリスクマネジメントの意識が強く求められます。
「採ってはいけない人」とは、入社後に問題社員となる可能性が高い人のことです。「何でも会社のせいにして不満分子化し、経営者や上司への誹謗中傷を繰り返す」「自分の権利ばかり主張する」「パワハラ」などを繰り返す人には、必ずその原因となる心の問題が存在します。
「問題社員」の大半は「精神的に自立しない人」
上述のような問題行動を繰り返す人の大半は、概して前回で述べた「精神的自立」に問題があります。常に誰か(何か)に依存して行動を選択するので、自分の思うようにいかないと他責の人と化し、自己執着を強めるあまり他人に興味が持てなくなって自己中心的になり、他者を排除しようとして攻撃的になるのです。
精神的に自立しない人が必ず問題社員になるわけではありませんが、リスク因子は確実に潜在するので、業務負荷や環境によって顕在化する可能性を否定できません。採用選考においては、精神的自立が怪しい応募者に敏感になる必要があり、学歴やキャリアなどに魅力があっても採用を見送る勇気が求められます。
自己防衛行動と自己充足行動
私たちがクライアントの採用支援において応募者を見極める際には、精神的に自立しない人特有の行動(自己防衛行動と自己充足行動)に着目します。私たちはアセスメントセンターという特殊な手法を使ってそのような行動をたくさんあぶり出すのですが、通常の採用面接などにおいてもキャッチできる行動の一部をご紹介します。
精神的に自立しない人は、現実の自分が露呈することを恐れるあまり、他者との真の交流を避けるための行動を選択します。それが自己防衛行動です。
<自己防衛行動の例>
・人と真正面から向き合って話せない
・言動が極めて堅苦しい(慇懃無礼である)
・終始、不自然で過剰な愛想笑いを絶やさない
・不自然で顕示的なうなずきや相槌を繰り返す
・声を張って、高圧的に話す(必要以上に語勢が強い)
・畳みかけるように話す
・言い訳や前置きが多い
●文/奥山典昭(おくやま のりあき)
概念化能力開発研究所株式会社代表、組織再編支援コンサルタント、プロフェッショナルアセッサー
大学卒業後、商社での海外駐在、大手電機メーカー、人事系コンサルティング会社などを経て、1999年に概念化能力開発研究所株式会社を設立。人の能力や資質を数値化して客観的に適性を評価する人材アセスメントと、組織に必要な人物像を抽出する採用アセスメントを駆使し、企業の組織再編や採用活動を支援。現在、応募者の本質を見抜くノウハウを企業の経営者や採用担当者に伝える採用アセスメントの内製化支援に注力している。著書に『デキる部下だと期待したのになぜいつも裏切られるのか』(共著・ダイヤモンド社)、『間違いだらけの優秀な人材選び』(こう書房)、『採るべき人 採ってはいけない人』(秀和システム)、『採るべき人採ってはいけない人第2版』(秀和システム)
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