人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2023年8月24日)
自分にとって未経験の分野の部署に異動したとき
新任管理職の方からの質問でたまにあるのが、「昇進と同時に、自分にとって未経験の分野の部署に異動したのですが、私より部下のほうが具体的な業務のスキルも知識もはるかに優れているので、どうマネジメントすればいいのか、悩んでいます」というものです。
管理職への昇進も、今までの部署で上に上がれば、やっている業務も同じですし、マネジメントする部下も気心が知れていたりするので、それほど苦労はありません。しかし、昇進したタイミングで新しい部署に着任した場合、自分より業務に精通した部下を従えなくてはならず、しかも部下は初めて接する人たちという状況なので、一体どうすればいいのかと戸惑うのもよく分かります。
ベテラン管理職でさえ、業務未経験の新しい部署に着任したときは、緊張感が高いわけですから、管理職としてのスタートが、新しい部署ではなおさら悩ましいことでしょう。
部下をどうマネジメントすればいいかについて話す前に、部下を動かすのに必要な観点を整理しておきましょう。
上司は何かしらの影響力を発揮して、部下を動かすわけですが、そのベースになるものにどんな要素があるか、以下の「すごい!/ブレない!/ありがたい!/すてき!/こわい!」の5つの表現で説明してみることにします。
●すごい!=専門性
他の人にはない突出した専門的な力(知識やスキルや人脈など)を持つ上司には、人は無条件に従おうとする傾向があり、影響力の基本ともいえるものです。
●ブレない!=一貫性
たとえ賛否両論あろうとも、一貫した姿勢に対して人はついて行こうとするものです。反対に「ブレてしまった」上司への落胆は意外に大きいともいえます。
●ありがたい!=返報性
自分にとってありがたいこと(鍛えてくれた、評価してくれた、いろんな人を紹介してくれた…など)をしてくれた上司には、恩を返そうとしますが、これも影響力の1つでしょう。
●すてき!=魅了性
人望や人間性など、具体的には説明しにくい部分ではありますが、「この人と一緒に働きたい」という人としての魅力も大事です。
●こわい!=厳格性
「この人に逆らうと、痛い目に遭う」というような恐怖政治的なものではなく、物事の本質を突き詰めていくような厳しい姿勢のことです。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。