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判例に学ぶ労使トラブルの処方箋/岡正俊

リハビリ勤務の賃金をどうするか?〜N事件(名古屋高裁H30.6.26判決、労判1189号51頁)〜

近年、労働関係の訴訟は社会的関心が高まり、企業にとって労使トラブル予防の重要性は増しています。判例をもとに、裁判の争点やトラブル予防のポイントなどを解説します。(2023年8月29日)

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【解説】

労働がなされたかどうか

 労働者がメンタル疾患により休職した場合、復職可否を判断するためや、精神的負荷を和らげるため等の目的でリハビリ勤務が行われることがあります。リハビリ勤務は休職期間中になされることが多く、休職中は無給とする会社も多いところから、無給とされることがあります。通勤するだけや、会社の業務とは関係のない読書をするなどであれば、無給にできると思います。

 しかし、軽易な作業であっても会社の業務の一部を行わせるような場合は「労働がなされた」と言えるので、本来の賃金ではないにしても何らかの賃金支払いが生じます。





作業程度に応じた賃金を支払う仕組み

 裁判所が、相当な賃金額は「いくらか?」を判断するのは困難です。ですが、労働者側から最低賃金の支払いを求める請求がなされているような場合、前記のとおり使用者は最低賃金については支給しなければならないため、本件のように支払いが命じられることになります。

 リハビリ勤務の賃金は、法的には最低賃金の支払いで済む可能性はあります。ですが、作業の程度に応じた賃金を支払う仕組みを設けるのが望ましいと言えるでしょう。



●文/岡正俊(おか まさとし)
弁護士、杜若経営法律事務所代表。1999年司法試験合格、2001年弁護士登録(第一東京弁護士会)。専門は企業法務で、使用者側の労働事件を数多く取り扱っている。使用者側の労働事件を扱う弁護士団体・経営法曹会議会員。
https://www.labor-management.net/
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