「最近、夜ベッドに入っても眠れなくなりました。前にもそういうことがあり、これで二度目です。初めて不眠になったときは、まさか自分が眠れなくなるとは想像もしていなかったです」
ビジネスホテルの運営会社でシステム関連の仕事に就いている安田正明さん(仮名・45歳)はいう。
「最初になったときは2週間くらい様子を見て、改善しないので心療内科に行きました。症状を話したら睡眠薬を出してもらい、飲んだら眠れるようになりました。今回は二度目なので、前のようなとまどいはありません。近いうちに病院に行こうと思っています」
不眠のきっかけは、新しい上司が異動してきたことだ。
「半年ほど前に、人事異動で上司が変わりました。ハラスメントをするような人ではありませんが、指示が行き当たりばったりで、部署全員が振り回されるようになりました。急ぎの要件ではないのに急がせたり、突発的に思いついたことを頼んできたりして、残業が増えていきました」
同僚の中には、そんな上司を適当にあしらってやり過ごす人もいた。だが、安田さんは上司の言うことを無視できなかった。
「急いでやってほしいと言われれば急ぎますし、突発的な仕事で納期が短くても、引き受けたからにはきちんとやりたいんです。自分でも融通が利かないと思いますが、そういう性分なんでしょうね」
安田さんは生真面目な性格で、適度に息抜きをしたり、人に頼ったりすることが苦手だった。そして、安田さんは家にいても仕事のことばかり考えるようになり、眠れなくなったという。数年前、初めて不眠になったときも仕事が原因だった。
「そのときは今とは違う部署にいたのですが、あまりにも仕事が多く、精神的に追い詰められていました。難しいお客さんがいて、どうすればいいのか悩んでいたら眠れなくなりました。薬で眠れるようになりましたが、このまま仕事を続けていたらうつになるかもしれないと思いました。退職も考えて会社に相談したら、異動を提案されたんです」
迷った末、安田さんは会社に残ることを決めた。それが2年ほど前のことで、異動した安田さんの業務は減り、精神的にも落ち着いたという。だが、新しい上司がやってきて状況は変わった。
「今は、以前よりもよくない状況だと思っています。業務量の問題ではなく、人の問題だからです。休職も考えましたが、将来のことを考えると、この会社にはいたくないという気持ちが強いです」
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●取材・文/三宅航太
大学卒業後、出版社、編集プロダクション勤務を経て、2004年、株式会社アイデム入社。Webメディア管理グループ所属。同社がWebサイトで発信する「人の戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務に従事する。さまざまな記事の作成や数多くの企業を取材。