<ストレス心理コンサルティング>
チームのモチベーションが下がる
チームに「バカな人」がいると、チーム全体のモチベーションが下がってしまう。その人との関係に疲れ果て、やがてメンバーは相手にしなくなる。「バカな人」は、毎日のように小さなミスや失敗を繰り返し、次々に問題を起こす。メンバーはフォローしなければならないが、毎日のことなので精神的に疲れる。メンバーの中に、ストレスから「バカな人」の失敗を誘う人が出てくる可能性もある。
また、近くに「バカな人」がいると、他のメンバーが感染してしまう恐れがある。マイケル・ハウスマンの研究では、有害社員が7.6メートル以内に座っていると、有害社員となる確率は倍以上で、解雇されるリスクが150%になることが分かった。
結実のような話を聞かない人の前では、誰も話をしなくなり、職員間のコミュニケーションにも影響が出るだろう。情報共有が機能せず、大きな問題が起こる可能性もある。「バカな人」の影響でチームのやる気が失われ、徐々に機能不全に陥るのだ。
職場に「バカな人」がいたら
職場に「バカな人」がいたら、どう対応したらいいのだろうか。上司だったら深刻だ。中間管理職の輝夫には部下がいて、彼らは深刻な影響を受けているだろう。一方で、実は「あの人はバカだ」と決めつけている人が、本当の「バカな人」かもしれない。その人の一面しか知らずにラベル張りをして、自分たちのゆがんだ心を満足させたいだけかもしれない。
人の性質も能力も多様なものだ。企業は自社で働く人たちの可能性に目を向け、チャンスを与え、成長させることが大切だ。会社にとって、人は財産である。「バカな人」と決めつけていた人の中には、会社の将来を救うような意外な才能が隠れているかもしれない。職場のメンバー全員が互いを思いやり、助け合う精神が必要なのかもしれない。
※参考・引用文献
『「バカ」の研究』ジャン=フランソワ・マルミオン編/亜紀書房
『知ってるつもり:無知の科学』スティーブン・スローマンら著/早川書房
『なぜ、最高のソリューションが出ないのか? 問題解決「脳」のつくり方』マシュー・E・メイ著/日本実業出版
『社会脳とは何か』千住淳著/新潮社
『チーム内の低劣人間をデリートせよ』ロバート・I・サットン著/パンローリング
『スタンフォードの教授が教える職場のアホと戦わない技術』ロバート・I・サットン著/SBクリエイティブ
『「器の小さい人」にならないための50の行動』西多昌規著/草思社
●文/河田俊男(かわだ としお)
1954年生まれ。心理コンサルタント。1982年、アメリカにて心理療法を学ぶ。その後、日本で心理コンサルティングを学び、現在、日本心理相談研究所所長、人と可能性研究所所長。また、日本心理コンサルタント学院講師として後進を育成している。翻訳書に「トクシック・ピープルはた迷惑な隣人たち」(講談社)などがある。