「転職先の年下の上司が使えなくて、ホント困っているんです。先日も意見したところ、メンタルをやられたのか、翌日会社を休んでしまって…」
1年ほど前から、あるポータルサイトの運営会社で派遣ディレクターとして働き始めた久保田優美さん(仮名・38歳)は、年下の上司との人間関係に苦労している。
その会社はベンチャー企業なので、20代の役職者が珍しくない。久保田さんの上司も、20代後半の若手だ。一方、久保田さんはディレクター歴15年以上のベテラン。Webサイトに関する知識やディレクションスキルは、上司よりも圧倒的に高い。
「経験値がないことから、その上司はときどき間違ったことを言ってしまうんです。けれども、若いから仕方ないですし、そこはまったく気にならないんですよ。やんわり指摘すると、こちらの声にもしっかり耳を傾けてくれますしね」
久保田さんによると、その上司は八方美人なイエスマンタイプ。クライアントや社内の営業担当にいい顔ばかりするので、しわ寄せがすべて派遣ディレクターにきてしまい、同僚たちはへきえきしているという。
「チームのムードも悪くなりつつあったので、最年長の私が一度その上司を呼び出し、現場の状況を伝えて改善を求めたのです。少し強い口調で言ったので逆ギレされるかなと思ったら、涙目で『どうしたらいいでしょう』と相談されて…。これには、あっけにとられてしまいました」
それ以来、頼りない上司をフォローしながらも、ときには冗談を言い合えるような良好な関係を築いてきた久保田さん。上司がとんでもないことをしでかしても、大人の対応で場をおさめてきた。ところが、ある一件を機に我慢の限界を超えてしまったとか。
「以前から仕事ぶりに問題があった外注のデザイナーについて、正社員である上司から注意してほしいとお願いしたら、『久保田さんがそう言っていた』とそのまま伝えられて…。デザイナーは私に猛烈に腹を立ててしまい、仕事がやりづらくなってしまったんです」
久保田さんは「そういった伝え方をすると、人間関係がこじれるのをなぜ想像できないのか?」「こんなことになるなら、○○さん(上司の名前)に言うんじゃなかったという気持ちです」「あなたはそのデザイナーに嫌われるのを恐れて、自分を守っているようにしか見えない」といった、少しキツい内容の長文メールを上司に送った。
「なぜ、派遣社員の私が矢面に立たされるんだよ、という気持ちでいっぱいになり、つい本音をぶちまけてしまいました」
すると、その上司からは謝罪のメールが届いた。自分でもマネジメントスキルがないことを自覚しており、メールを読んで涙したのだという。
「どうすれば私のように強くなれるのかと相談されたので、『嫌われたくないと思う人ほど嫌われます。腹をくくることが大事』と返しておきました。なぜ派遣社員の私が、正社員の上司のマネジメントをしなきゃならないの!? という感じです」