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判例に学ぶ労使トラブルの処方箋/岡正俊

労働条件通知書の記載と職種限定契約〜K事件(京都地裁平成30.2.28判決、労判1177号19頁)〜

近年、労働関係の訴訟は社会的関心が高まり、企業にとって労使トラブル予防の重要性は増しています。判例をもとに、裁判の争点やトラブル予防のポイントなどを解説します。(2024年2月27日)

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【解説】
 労働基準法施行規則と「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の改正に伴い、今年の4月1日から労働条件の明示事項等が変更されることになりました。具体的には、これまでの雇入れ直後の就業場所・業務の内容に加え、就業場所・業務の変更の範囲の明示が義務付けられました。





 本件の判断のように、これまでの裁判例では、労働条件通知書、雇用契約書に特定の就業場所、業務内容が記載されていたとしても、雇入れ直後の就業場所、業務内容を記載したものであり、「就業場所、業務内容を限定する合意ではない」とされることが多かったです。それは、終身雇用の考えのもと、社内でキャリアを積みつつ定年まで働き続けることが一般的な日本においては、定期異動が予定されたり、転勤があることが当然と考えられてきたからです。

 もっとも最近では多様な働き方を求めるニーズもあり、政府も多様な働き方を推奨しています。そんな中、就業場所、業務内容の変更の範囲についてもさまざまな内容が考えられ、これらを明示しておかないとトラブルになりかねないため、今回の改正で明示が義務付けられました。
 しかも厚生労働省の労働条件通知書の記載例では「会社の定める場所」「会社の定める業務」「会社内でのすべての業務」といった幅広い記載も認められています。

 このようなことから、労働条件通知書の就業場所、業務内容の変更の範囲に何も記載していない場合には、変更がない(つまり勤務地、職種限定契約)と受け取られかねません。今後変更があり得るのであれば、労働条件通知書にしっかりと明示しておく必要があると言えます。



●文/岡正俊(おか まさとし)
弁護士、杜若経営法律事務所代表。1999年司法試験合格、2001年弁護士登録(第一東京弁護士会)。専門は企業法務で、使用者側の労働事件を数多く取り扱っている。使用者側の労働事件を扱う弁護士団体・経営法曹会議会員。
https://www.labor-management.net/
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