仕事ができる人が辞める原因
仕事ができる人は職場の要です。上司、経営者の右腕となって現場運営や業績アップに貢献してくれる貴重な存在です。ただ、「仕事ができる人から会社を辞めていってしまう」というのが世の常で、優秀な人材の離職に悩む企業は多いのではないでしょうか?
仕事ができる人は、何も言わなくても期待以上の成果を上げてきます。一方、ミスをしたり、うまく業務を進められない人は、手取り足取り教育や指導をしなければなりません。そうなると、上司、経営者は、仕事ができない人に時間、労力、エネルギーを使うことになってしまい、仕事ができる人を放置しがちになります。もちろん、仕事ができる人へは、ねぎらいの言葉掛けなどは、ちゃんとしているつもりでしょうし、感謝もしているはずです。
ただ、あれこれ指示をしなくとも、自分で考えて行動してくれるのが、当たり前と思ってしまうと、彼、彼女たちの承認欲求が満たされなくなり、心が離れてしまい、離職へとつながります。これが、仕事ができる人から辞めていくことの大きな原因なのです。今回から始まるこの連載では、「仕事ができる人」が辞めずに、やりがいをもって働き続けることができる職場のつくり方とマネジメントのやり方、考え方をご紹介していきます。
年間の売上予算を2年連続で達成したけれど…
かつての私自身のことをお話しましょう。アパレル企業の本部でエリアの統括マネージャーをしていたとき、会社全体の業績が大きく落ち込んでいた時期でした。そんな中、20人ほどいたマネージャーの中で、年間の売上予算を2年連続で達成したのは私1人だけでした。
期末の業績発表会の場で、当時の私は、社長や本部長などから、ねぎらいの言葉を掛けてもらえるだろうと思い、期待していました。しかしながら、直属の上司を含めて、誰からも何も言われることはありませんでした。それどころか、その年のボーナスが減額されていたのです。
今振り返れば、会社の業績が大幅に落ち込んでいる状況では、致し方なかったのだろうなとは思います。でも、20歳代の私は、その企業で頑張って働く意味を失ってしまい、数か月後に退職することになりました。
なぜ、この話をしたのか? 武勇伝をひけらかすためではありません。当時の私と同じ気持ちを持つ人が、あなたの職場にもいるかもしれないことを知ってもらいたいから伝えたのです。
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』(WAVE出版)、『人材マネジメント一問一答』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。