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事例で考える困ったときのマネジメント対応/山田真由子

第3回「メンタル不調気味の部下がいたら」

働き方や価値観が多様化する中、マネジメントは個別対応が求められています。さまざまな事例から、マネジャーに求められる対応を解説します。(2024年6月18日))

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 あなたは「五月病」と聞くと、どんなことをイメージしますか?「メンタルが弱い」「Z世代は根気がない」などの考えが頭をよぎったら要注意です。五月病は、一般的には新入生や新卒社員がGWの連休明けに心身のバランスを崩すことを指します。ですが、環境の変化が多いときは、誰でもバランスを崩す可能性があります。

 環境の変化は、ストレスを伴うものです。新入社員として初めて職場に配属されたときだけでなく、配置転換があったときや昇進したときなど、さまざまな状況が考えられます。今回は、メンタル不調気味の新入社員の対応について考察します。





■今回の事例
 A課長(38歳・男性)には、Bさん(22歳・女性)という部下がいます。Bさんは新卒で採用され、一人暮らしを始めました。入社当初は責任感が強く、一所懸命に業務をこなそうとしていましたが、5月中旬頃から表情が暗く、元気がなく、仕事に対してもやる気が出ていません。

 仕事上のミスも多くなったので、A課長はBさんに「大丈夫?」と声を掛けました。ですが、Bさんは「すみません」と答えるだけでした。しばらく様子を見ましたが元気になる様子はなく、表情は暗いままで状況は変わりません。このような場合、どう対応をしたらよいのでしょうか?


■解説
 事故や災害などの危機的出来事に見舞われた人々の心をケアするための基本的な手法に、サイコロジカル・ファーストエイド(以下PFA)というものがあります。心理的応急処置と訳され、メンタル不調の人に対するケアとしても有効です。世界保健機関(WHO)が示しているPFAの活動原則は、事前の準備(prepare)と、活動中の「見る(look)・聞く(listen)・つなぐ(link)」から成り立っています。以下、3Lに沿って対処法を解説していきます。

(1)Look(変化を観察する)
 「Look」は、対象者の変化を観察することです。一般的には、変化が多いほど、ストレスが溜まる傾向があります。今回の事例を見ると、Bさんは「引っ越し」「一人暮らし」「初めての職場」「初めての土地での生活」など、多くの変化があります。私の経験則によると、メンタル不調に罹患した方は3つ以上の変化を抱えていることが多いです。

 また、観察するときは、うつ病の可能性を発見するための「ケチな飲み屋サイン」も参考になります(『人事・総務担当者のためのメンタルヘルス読本』(鈴木安名著/大原記念労働科学研究所刊)で示されている、うつ病の可能性があるサインを語呂合わせしたもの)。

<ケチな飲み屋サイン>
け「欠勤」
ち「遅刻・早退」
な「泣き言を言う」
の「能率の低下」
み「ミス・事故」
や「辞めたいと言い出す」

 今回の事例を見ると、「ミスが多い」という項目が該当します。このときに「大丈夫?」という声掛けよりも、健康面からアプローチをするとよいでしょう。「最近、眠れてる?」「ごはんちゃんと食べれてる?」というような声掛けです。睡眠についての声掛けには、すんなりと答えてくれることが多く、部下の健康状態を知る手がかりになるでしょう。
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●文/山田真由子(やまだ まゆこ)
山田真由子社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士、公認心理師、キャリアコンサルタント。26歳のときに3度目の受験で社会保険労務士に合格。さまざまな業種にわたり、約15年のOL 生活を経て、2006年12月に独立開業。現在、「誰もが輝く職場づくりをサポートする」をミッションとして活動している。経営者や総務部担当者などから受けた相談件数は延べ10,000件以上、セミナー登壇は1,500回以上を数える。著書に『外国人労働者の雇い方完全マニュアル』(C&R研究所)、『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル部長、それってパワハラですよ』(徳間書店)、『すぐに使える!はじめて上司の対応ツール』(税務経理協会)。
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